6 初めの第一歩!薬草採取クエスト
◇◇◇
「薬草を採取するときは、まず群生地を見つけることが大切だ。ただし、群生地を見つけたからといってその場所ばかり採取するのはマナー違反だ。一度に取りつくしてしまうとせっかくの群生地が無くなってしまうからな。だからこうして間引くような形で採取する。根を使うもの以外は基本的に葉の部分だけ採取するように。根を残すことでまたすぐに新しい葉が生えてくるからな」
ロルフは実際にひとつずつ薬草を採取して三人に実践して見せてくれる。ティアラ、リリア、フェンの初心者三人組は初めてのクエストに興味しんしんだ。
「これが回復薬の原料となる薬草。こっちが、毒消し草。これはしびれを取る薬の原料。こっちの草を使うと火傷によく効く軟膏ができる」
「薬草にも色んな種類があるんだね。簡単な傷薬の材料くらいしか分かんないや」
薬草採取は初めてのリリアが、薬草の種類の多さに思わずため息をつく。薬草採取のクエストは初心者向けとはいえ、森の中には危険な毒草もあるため注意が必要だ。薬草の正しい知識を得ることは冒険者となる第一歩ともいえるだろう。
「そうだな。採取依頼は薬草の他にも珍しいキノコなんかもあるから覚えておくといい。あとは、この前遭遇した魔物の粘液とかな」
「うう、粘液はトラウマだよ……」
「ははは、まぁ、あいつはめったにお目にかからないから安心しろ」
リリアにはなにやら粘液にトラウマがあるらしい。ティアラたちはロルフのアドバイス通り、採り過ぎないように注意しながらバランスよく採取していく。地道な作業だがこれが意外に楽しい。のんびりと薬草採取を続けていると、魔物狩りに出かけていたジャイルとミハエルが帰ってきた。
「おーい!魔物狩ってきたぞー!」
見ると巨大な猪の魔物をプカプカと空中に浮かべながら歩いてくる。
「おお、凄いな!大物じゃないか」
ビッグホーンと言われるその魔物は鋭い牙を持っており、非常に気性の荒い魔物として恐れられている。通常Bランク以上の冒険者かCランク冒険者が3人以上のパーティーで討伐するケースが多い。
「急所を的確に仕留めているから毛皮の状態も肉の状態もいいな!こいつの肉は最高にうまいからな。ギルマスが喜ぶぞ!」
「うしししし、今日はビックホーンのステーキだぜっ!」
「アデルさんに教えてもらった通り、川で血抜きまで済ませてきました!」
「2人ともえらいぞ!立派な冒険者になったな!」
アデルに褒められて二人は嬉しそうだ。
「どうだ、ティアラ!すげえだろう?」
「とどめを刺したのは僕ですけどね?」
2人の言葉にティアラも笑顔で頷く。
「すごいすごい!もうこんな大きな魔物を討伐できるなんて!二人とも腕を上げたね!」
「まあな~。ティアラのほうはどうだ?薬草の採取は終わったのか?」
「じいやとエリックがたくさん採取してくれたから、今ロルフさんに教えてもらいながらリリアさんとフェン君の分のお手伝いをしているの」
「お、じゃあ俺たちも手伝おうか?」
「ありがとう!でもお肉が新鮮なうちにギルドに届けたほうが喜ぶんじゃない?」
「こっちもこれだけあれば十分だ。今日はここまでにしようか」
ロルフの言葉に一同は軽く頷いて森を後にした。常駐クエストである薬草採取クエストと魔物討伐クエストのため、成果物をギルドに提出した時点でクエストクリアになる。
「アデル、姫様、世話になったな。みんなも付き合ってもらって悪かった。ありがとう」
「気にすんな。フェンの件、用意ができたら知らせるよ」
「また逢いましょうね!」
こうしてティアラ一行はギルドでロルフ達三人に別れを告げた。
◇◇◇
「ロルフさんとリリアさんすっごいラブラブだったね!」
ロルフ達と別れたあとティアラはアデルにこっそり耳打ちする。
「だな。つい最近も騎士団にこないかって誘ったんだが、「惚れた女のお守りが忙しい」って断られたんだよな。騎士団の誘いそんな理由で断るのあいつぐらいだぞ?」
「あはははは!でもなんかわかる!ロルフさんなんだかんだいって面倒見いいよね!」
「ティアラにも分かるか?あいつなんだかんだ面倒見良くてさ。初心者が森で困ってると必ず声かけて助けてやってるんだよな」
「ふふふ、なるほど。森の守護者に選ばれるだけあるよね!」
「その『森の守護者』ってなんなんだ?」
「んーと、獣人のなかでも特別強い力を持って生まれた人のことだよ。みんなその力を使ってそれぞれの場所を守っててね。優しくて正義感が強い人が多いの。ロルフさんには森の加護があるみたい」
「ほぉー、そうなのか。その森の加護ってのはどんな能力なんだ?」
「ん~どんな能力かはわからないな。でも、加護の色というかイメージでなんとなくわかるの」
「はぁ、俺にはよく分からんが、取りあえずあいつも特別な奴ってことだなっ!」
「ふふ。そういうことっ!」
◇◇◇
「あ~、楽しかった!やっぱり森はいいよね」
ティアラの言葉にエリックがにこにこして答える。
「ティアラは自然が多く残る場所が好きですね」
「うん、自然の中にいると元気をもらえる気がするの」
「薬草採取は楽しかったですか?」
「うん!冒険者のみんながどんなふうに薬草を集めているかわかったよ!でも、ちょっとあそこの森瘴気が多い気がする。森の入り口近くまでうっすら瘴気を感じたよ」
「私と大神官様が定期的に浄化を行っているのですが、大神官様も高齢のためなかなか森の奥までは入れなくて」
「そっか、大変だよね。そうだっ!じゃあ私とエリックで森の浄化活動しない?」
「いいのですか?」
「もちろんっ!魔物は大切な糧ではあるけど、強い魔物が増えすぎると皆困るしね」
「そうですね。瘴気が薄くなれば魔物の数も減るでしょう」
二人はにっこり微笑みあった。こうして二人の森浄化計画がスタートした。
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