4 飛び出し禁止!冒険者殺しの森!
◇◇◇
「わぁ!森だぁ!」
王都から程近い場所にある森、通称「冒険者殺しの森」は、王都で活動する冒険者にとって、活動の中心となる場所だ。入り口付近は弱い魔物しか出ず、初心者でも安心して活動できる。一方で、奥にいけばいくほどレベルの強い魔物が生息しており、ベテラン冒険者といえど油断できない場所だ。
ティアラは久しぶりに感じる森の気配に胸が高鳴るのを感じた。
(ああ、この感じ!懐かしい!)
「ティアラは森に来るのは初めてだな。エリックはどうだ?」
「森はよく来ますよ。教会としても、瘴気の浄化と冒険者の治療を兼ねて月に何度か見回りを行っていますからね」
「じゃあエリックは問題ないな。ティアラ、この森は奥に行くほど強い魔物に遭遇する確率が高くなる。ティアラに力があるのは知っているが、くれぐれもひとりで森の奥にいくのはやめてくれ」
「はーい」
「今日は森の入り口付近に生えている薬草の採取だ。たまに弱い魔物が出てくることがあるから油断するなよ?」
「ふふ、どんな魔物に会えるか楽しみ!」
「ティアラは魔物も平気なの?普通女の子は怖がるのにね」
「ミハエル、ティアラが普通なわけねーだろ?アンナさんがティアラが小さい頃、すでに魔物の子どもを手懐けてたっていってたぞ?」
「ということは、姫様はテイマーの才能もあると言うことですかな?」
「そうね。ある程度知能がある魔物なら仲良くなれるかな」
「どうせならドラゴンを仲間にしよーぜっ!」
ジャイルの言葉にティアラはびくりと体を震わせる。
「ティアラ?」
心配そうに顔を覗き込むエリックに、ティアラはなんでもないと首を振る。
(フィリップ……)
ティアラは、大好きな白金のドラゴンを思い出していた。
「うん。私、ドラゴンに早く逢いたいよ。大好きなんだ……」
「だよな!だよな!やっぱドラゴンだよなっ!さすがティアラ、わかってるぜっ!」
「ドラゴンですか。さすがのじいもまだお目にかかったことはございませんな」
「え、ええー、ちょっとみんな、おかしいんじゃないの?ドラゴンだよ?」
「ははっ、本当にいたら面白いな」
みんなが口々に語るなか、エリックだけはティアラをじっと見つめていた。
◇◇◇
「アデル!待たせたな!」
薬草採取を始めてしばらくたったころ、ロルフたちが合流した。
「おう、ロルフ!まだ始めたところだ。まぁ、こっちにこいよっ!ティアラ、一緒に来てくれるか?」
「姫様も?実はそんなに聞かれたくない話なんだが……」
「ん、すまんな。でも、ティアラには話しておいたほうがいい。俺よりよっぽど役にたつアドバイスをしてくれると思うぞ?」
「ふーん?」
ロルフがちらっとティアラに目をやる。ティアラはにっこり笑ってロルフに近づくと、ロルフの耳にそっとささやいた。
「フェンリルのことか、神獣の巫女であるリリアさんについての相談ですよね?それとも、森の守護者たるあなたの力についてかな?」
「あんた……なにもんだ?」
一瞬ティアラを睨みつけるロルフ。とそこへ、
「ちょっとロルフ!なに天使を睨んでるのよっ!失礼にもほどがあるわっ!」
すぱーんと、いい音をさせながらリリアがロルフの頭を叩く。
「がうっ!女神様に失礼です!」
フェンもロルフの足にガブリと噛みついて威嚇している。
「ちょっ、まて。おまえら……俺はだな……」
「ふふ、いいんです。私がびっくりさせちゃったから。大丈夫。私は敵じゃありませんよ」
悪戯っぽくウィンクするティアラをみてこくこく頷くリリアとフェン。
「はいっ!天使さま!」
「女神さまですぅ!」
すっかり人外認定されていることにちょっと戸惑いつつ、ロルフと話を進める。
「えっと、詳しいことは内緒ですが、実は私にもフェンリルのお友達がいるんです」
「えっ?姫様も?」
ティアラの言葉に驚くロルフ。
「まさか、神獣の巫女が一度に二人も……」
「んー、私は巫女ではありません」
「じゃあいったい……」
「だーかーらー!女神様ですぅ!」
「え?なになに?何の話?」
耳のいいロルフとフェンには声を潜めたティアラの言葉がはっきりと聞こえるが、リリアには聞こえないらしくひとりで三人の周りをうろうろしている。
ロルフはしばらく考えた後、
「よし、わかった。じゃあアデルと姫様に話を聞いてもらう。リリア、フェンもいいか?」
「へ?いや、よくわかんないけどロルフがいいって思うならいいよ」
「僕もいいと思います!」
「よし。すまない、セバスとエリックは少しここで待っていてくれるか?」
「ワシたちのことは心配ご無用ですじゃ」
「どうぞごゆっくり」
二人はにっこり微笑んで手を振って答える。
こうして五人は皆から少し離れた場所で腰を下ろした。ジャイルとミハエルは少し奥まで魔物に魔物を探しに行っており、セバスとエリックがペアを組んで薬草を丁寧に採取している。
「二人にはもうバレてるみたいだからまどろっこしいことはなしだ。実は、リリアとフェンの事で相談がある」
ロルフは真剣な口調で話し出した。
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