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3 ロルフとリリアとフェンリルと?

 

 ◇◇◇


 ティアラ達がテーブルで談笑していると、回復魔法をかけた冒険者たちが口々にお礼をいってくる。


「め、女神様っ!あの、俺、さっき怪我の治療をしていただいたリックです!」


「お、俺はアランです!あの、あの、ありがとうございます!」


「お、俺、なんてお礼をいっていいか……」


 冒険者たちの明るい表情をみてティアラも思わず笑顔があふれる。


「喜んでもらえて私も嬉しいです!何かあったらいつでも私のところにきてください。でも、無理はしないでくださいね?」


「はっ!はい……」


「が、頑張ります!」


 ティアラの笑顔を直接向けられた冒険者たちは、思わず両手を組んで拝みそうになっている。こうなると普段強面の冒険者もかたなしだ。


「おーお、ずいぶん信者を増やしたなぁ?」


「もう、やめてよジャイル!みんな、ケガに苦しんでたんだね。役に立ててよかった。それに本当だったらエリックも回復魔法使えるんだから」


「いえいえ、私の回復魔法はティアラの足元にも及びませんから……」


「いや、エリック様も十分凄いですよ?」


「ほっほっ、お二人とも新人とはいえ頼もしいですなぁ」


 とそこに、


「お、ロルフじゃねーかっ!」


 アデルが冒険者たちの中に知り合いを見つけて声をかけた。


「ん?ああなんだ、アデルか。」


「なんだとはご挨拶だな。久し振りだな!ロルフ!」


 アデルより少し年下だろうか。すらりとしたしなやかな姿態を持つ黒髪の少年は驚くほど整った顔をしていた。月の光のような淡い金の瞳が印象的で、どこか野性的な危険な魅力を感じさせる。エリックをはじめ普段イケメンを見慣れているティアラでさえ驚くほどのイケメンだ。


「ねえロルフ、知り合い?」


 ロルフの後ろからひょっこり顔を出したのは、小動物のように小柄な少女だ。焦げ茶色の丸くて大きな瞳と瞳と同じ色の、ちょっと癖のある柔らかな髪が愛らしい。


「お、もしかしてその子がお前が前話してた子?」 


「ん。紹介する。俺のリリアだ」


 どうやら二人はカップルらしい。真っ赤な顔をした少女が隣にいた小さな男の子と一緒にぺこりと頭を下げる。


「は、はじめまして、リリアです。こっちはフェンです」


「アデルだ!よろしくな!こっちは妹のティアラだ。今日冒険者登録したところなんだ。色々教えてやってくれよ?」


「ティアラです。よろしくお願いします。あと、こっちは神官のエリックで今日一緒に冒険者になりました。ここにいるみんなとパーティーを組む予定なんです」


「エリックです。新参者ですがよろしくお願いしますね」


「ロルフだ。よろしくな姫様、神官様」


「え?え?姫様?それに神官様!?」


「ああ、第二王子のアデル王子と第三王女のティアラ姫だ」


「……は?」


「おー!ロルフだ!また今度剣の使い方教えてくれよ!」


「ロルフさんこんにちは!後で新作の魔道具持って行くのでまた感想聞かせて貰えますか?」


「おう。いいぜ?セバスのじいさんも久し振り」


「ロルフの坊ちゃんも久し振りじゃな」


「坊ちゃんは辞めてくれよな。で、この双子がノイエ王国の第一王子ジャイルと第二王子のミハエル。こっちのじいさんが元王室執事長のセバスだ」


「ジャイルだっ!Cランク冒険者だぜ。よろしくな!」


「ミハエルです。僕もCランク冒険者です」


「リリア嬢ちゃんにフェン君か。ワシはセバス。同じくCランク冒険者じゃ」


 どうやらロルフとはみんな、顔見知りらしい。


「はわわわわ、よ、よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします!」


「ちょうど良かった。アデルに相談したいことがあったんだ」


「へえ、ロルフが俺に相談事なんて珍しいな。こいつすげえ奴でさ。何度も騎士団にスカウトしてるんだけど、いっつも振られるんだよなぁ」


「俺に騎士なんてつとまらねーよ。んな柄じゃねーし」


「意外と似合うと思うけどなぁ。ま、気が変わったらいつでも声かけてくれよ!」


「ああ。なるべく極秘で話したいから、わるいけど今度時間作ってくれるか?」


「ん?ならいいぜ!ちょうど冒険者登録も終わったとこだから昼飯食ってからクエストにいこうと思ってるんだ。そこの冒険者の森だから良かったら一緒にいかないか?」


「どうする、リリア、疲れてないか?」


「私は大丈夫だよ?フェンは平気?」


「僕も元気いっぱいですっ!」


「じゃあアデル、俺たちも用事を済ませたら合流させてもらう」


「おう!昼過ぎに森の入り口近くにいるから声かけてくれよな!」


「ああ、サンキュ」


 ロルフたちが去っていくと、ティアラはアデルにこっそり耳打ちした。


「ねえ、アデルお兄様。あの子フェンリルだよ?」


「ん、なんだティアラ……ってええっ!?」


「しいっ!多分隠してるんだと思うから静かに!」


「あ、ああ、すまない。フェンリルって、どっちだ?」


「小さな男の子のほうだよ。真っ白な耳と尻尾があったでしょ?」


「あの子かぁ……」


「で、リリアさんがフェンリルの契約者だね」


「は、はぁ?ロルフ、とんでもない子と付き合ってんなぁ……」


「ん~、()()()()()()()()()()()お似合いの二人だね!」


「特別?」


「多分、そのこと相談されるんじゃないかな?」


「え、ああ。それが本当なら確かに極秘事項だなぁ……フェンリルなんて伝説の生き物だぞ?」


「そうなんだ?」


「もちろん。何百年も目撃されてないからな」


「そっか……」


「ティアラはよくわかったな」


 アデルの言葉にティアラはにっこりと微笑んだ。何しろティアラの前世アリシアは、冒険者として活動するときフェンリルと一緒にパーティーを組んでいたのだ。


 フェンと名乗るフェンリルを見たとき、懐かしさに胸が一杯になった。


(リル、元気にしてるかなぁ)


 戦乙女(いくさおとめ)と言われた凛々しい少女の姿を思い出す。


「ま、後でロルフにゆっくり聞くとするか。ここのギルドの飯は最高だぞ?皆で飯にしよう!」


「待ってました!今日は師匠のおごりだよなっ?」


「ごちそうさまです。アデル兄さん」


「姫様、エリック殿、ここのシチューは絶品ですぞ?」


「それは楽しみですね」


「よし!一杯食べるぞ~!」


「おう、食え食え。冒険者は体が資本だからな!」


(ロルフさんにリリアさんにフェン君か。ふふ、後で会うのが楽しみだな!)

読んでいただきありがとうございます!

同時連載中の『職業「テイマー」なのになぜか獣人ばかりにモテすぎて困ってます!』のリリアとロルフが登場します!

それぞれ単独で楽しめる作りになっていますが

リンクしているので両方読むと二度楽しいかも(笑)


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