25 パーティーのその後で
◇◇◇
「パーティー、緊張しちゃったけど、楽しかったなぁ」
「ようございましたね、姫様。淑女としてご立派な振る舞いであったと皆様誉めておいででしたよ」
「えへへ、ありがとうアンナ」
パーティーが終わってから1ヶ月、ようやくティアラはのんびりした日々を過ごしていた。今日は天気が良いので庭を散策しつつ、エリックとともに魔法の練習をしている。
「また二人でダンスを踊りたいですね」
エリックがにっこりと微笑む。元々神秘的で美しい人だとは思っていたが、王子様だと知ってからはよりいっそうキラキラ輝いて見えるから不思議だ。そばに仕えているメイド達もうっとりとした目で見つめている。
「エリック様、とっても素敵でしたよ!ダンスもとてもお上手でびっくりしました!」
「ふふ、そう言って頂けると勇気を出してお誘いした甲斐がありました」
二人がのんびりと庭の散策をしていると、騎士団の練習場のほうからジャイルとミハエルが駆けてくるのが見えた。
「ティアラ!」
「あ、ジャイル。ミハエルもおはよう。いい天気だね!」
「おはようティアラ、今日も可愛いね?」
「おっさんとばかり遊んでないで、あっちで俺達と遊ぼうぜ!」
「ちょっ!なんてこと言うの!エリック様に失礼でしょう!」
「ジャイル王子殿下、ミハエル王子殿下、おはようございます」
「エリック王子殿下、おはようございます。ティアラといっしょにお散歩ですか?」
「ええ。たまにこうしてご一緒してるんですよ。お二人とも、この国の生活には慣れましたか?」
「はい!アリシア王国は本当に素晴らしいです!魔道具が発達していて、凄く便利なんですね」
「ええ、昔から魔道具作りが盛んで、優秀な技術者も多く育っています。技術者のための学校もあるんですよ」
「そうなんですね!」
「ミハエル王子殿下は、魔道具作りに興味があるのですか?」
「はい!僕はアリシア王国で魔道具作りを学びたいと思っています」
「それは素晴らしいですね」
「俺は剣を学ぶ!アデル王子に弟子入りしたんだ!」
「アデルお兄様に?」
「ああ!師匠は超カッコイイからなっ!見てろよティアラ、俺はいつか師匠みたいな剣士になるぜっ」
パーティーの翌日から、ティアラの元には結婚の申し込みが山のように舞い込むようになった。パーティーでの美少女ぶりが評判を呼び、パーティーに参加していなかった遠国の王族からの申し込みも後を絶たないのだ。
また、ノイエ王国からは、第一王子、第二王子両方から申し込まれるという異例の事態となり、さらに、アリステア王国第二王子としてエリックからの申し込みもあった。
あまりの数の多さに今すぐ判断することはできないとの結論になり、結局ティアラの婚約者候補は白紙のままだ。
ただ、エリックがすでに王宮神官としてティアラの側にいることから、現段階ではエリックが優勢ではないかと考えている国が多い。
そこで、ノイエ王国では両王子をアリシア王国に留学させることに決めた。しかも、いまだ未成年のため、客人として王宮で生活する事になったのだ。ちなみにエリックも、神殿の部屋とは別に王族専用の部屋が王宮に用意されることとなった。
ジャイルやミハエルとは食事や勉強を共にする機会も多かったため、今ではすっかり仲良くなった。ティアラには年の近い兄弟がいないため、年の近い友人ができたことを単純に嬉しく思っていた。
「お二人も、何か困ったことがあったらいつでも相談してくださいね」
「はい、エリック王子殿下、ありがとうございます!」
「ここでは、神官として働いております。どうかエリックとお呼び下さい。」
「じゃあエリックな!」
「ちょっとジャイル!アリステア王国の第二王子殿下で聖人の称号を持つお方に失礼だよ!」
「いいえ、いいのです。距離をおかれてしまうより、親しく名前で呼ばれるほうが嬉しいのですよ」
「ほら?本人がそういってんだぜ?」
「えーと、じゃあ、エリック様と呼ばせていただきます。僕のことはミハエルと呼んでください」
「じゃあ俺も。俺のことはジャイルって呼んでいいぜ?」
「はい。じゃあ、今後は敬称なしで呼ばせていただきますね」
にこにこと微笑むエリックにティアラはほっとする。そつのない対応ができるミハエルに比べてジャイルはやんちゃなところがある。エリックに対してもたびたびライバル意識をむき出しにすることがあったが、最近ではエリックの穏やかな人柄にすっかり毒気を抜かれてしまったようだ。
両陛下から、すでにこの三人から婚約の申し込みがあったことは聞いているが、まだ8歳のティアラには婚約や結婚と言われてもぴんとこない。
◇◇◇
――――こうして二年の年月が穏やかに流れていき、ティアラは10歳の誕生日を迎えた。
一章が完結。次回から二章冒険編がスタートします!
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