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20 王宮神官エリック誕生!

 

 ◇◇◇


 孤児院の訪問からしばらくして、エリックは王宮付きの神官として正式に王宮に派遣されることになった。カミールとアデルは必死に辞退したのだが、本人のたっての願いということで大神官様から直接頼まれたため断りきれなかったらしい。


「ティアラ様、このエリック、必ず、必ずティアラ様のお役にたってみせます。なんなりとお申し付け下さい」


 すちゃっとティアラの前に跪き、両手を組んで祈るエリックに、ティアラはくすりと笑って王女らしい礼を取ってみせる。


「ご機嫌ようエリック様。どうぞそんなに畏まらないで下さい。これからは王宮でもお会いできること、嬉しく思います。よろしくお願いしますね」


 王女らしいきちんとした挨拶にアンナも満足そうに頷いていたが、次の瞬間思い出したように手を叩くとキラキラした目をして付け加える。


「そういえば、エリック様はとても魔法がお上手だと子ども達から聞きました!誰も見たこともないような、不思議な魔法を使われるとか?どんな魔法ですか?見てみたいなぁ……」


「姫様っ!神官様に失礼ですよ!」


 アンナが慌ててティアラを叱る。教会では魔法は女神の加護であり、神聖なものとして扱われている。神官に魔法を見せてくれなどと言った場合、見せ物ではないと怒られてもおかしくないのだ。


「あ、軽々しく魔法を見せてなんていっちゃって、ごめんなさい、エリック様」


 ティアラがシュンとして謝罪の言葉を口にするが、エリックは変わらずニコニコしながら答えた。


「いえいえ、私の魔法などティアラ様の奇跡に比べると子どもの遊びのようなもの。とるに足りないものです。いつでもお見せしますよ」


「ええー!本当にいいんですか?ぜひ見せて下さい!」


 ティアラが嬉しそうに微笑む顔を見て、エリックもにこやかに微笑む。


「ふふっそうですね。では、機会があればお見せしますね」


「約束ですよ?」


「はい、約束致します」


「あ、そうだ!実は私もつい最近色々な属性の魔法を使えるようになったのですが、なかなか練習できなくって。今度魔法の練習に付き合って頂けませんか?」


「なんとっ!ティアラ様の魔法をまた見る機会を与えて頂けるのですか!?」


「ええ!ぜひこちらからお願いします。エリック様」


 ニコッと笑うティアラを恍惚とした表情で眺めるエリックにハラハラする兄二人。


「なぁ、アデル。エリック様は、どこまで本気なんだろうか」


「うーん?シスターや子ども達からも話を聞いてみたが、穏やかで優しい人格者だと言うことだ。下町や田舎町にも度々顔を出して、無償で治療を行っているとか。小さな子供からご老人まで分け隔てなく接し、尊敬されているらしいぞ?ティアラに対する態度だけが変なんだよなぁ?」


「ああ。あれは、8歳の子どもに向けるような目じゃないだろう?どういうつもりか分からないが……」


「取りあえずしばらくは様子を見るしかないだろうな。なんといっても大神官様の秘蔵っ子らしいし。教会は好きじゃないが、大神官様には散々お世話になったから不義理は出来ないしなぁ」


「そうだな。ティアラに危害を加える相手では無さそうだしな。そのうちプロポーズでもしそうで怖いのだが……しっかり目を光らせていよう」


 顔を見合わせながら深く頷く二人だった。


 ◇◇◇


「そう言えば、ティアラのお披露目パーティーの準備はどうなんだ?」


「ああ、遠方からの招待客も続々と王宮に到着しているよ。なんといっても、国内外に向けた初めてのお披露目だからね」


「母上が張り切ってドレスの準備をしていたな」


「あのおてんばさんが大人しくしているといいんだが」


 ティアラが8歳の誕生日を無事迎え、三週間後には国内外の王族、貴族などを招いて王宮でティアラのお披露目パーティーが開かれることになっていた。ティアラにとって初めてのパーティーであり公式な挨拶の場となるため、王妃やアンナが中心となって張り切って準備を進めている。


 当然王子二人も、続々と到着する賓客の対応に追われていた。アリシア王国は大陸から遠く離れた島国のため、パーティーに呼ばれた王族や貴族のほとんどが事前に到着し、視察も兼ねて長期滞在となるケースが多い。


 忙しいなかでも、ティアラのドレス姿を想像して顔を綻ばせる二人だった。


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[良い点] エリックさんのティアラへの愛がすごい。 優しくてとんでもない魔法を使えるから仕方ないですね。 お兄様ふたりにも愛され、孤児院のみんなにも慕われ、 とても居心地の良いお話です。
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