18 神官様は小さな女神に恋をする
◇◇◇
ティアラの織りなすキラキラと輝く虹色の魔力。そのあまりにも神秘的で神聖な力に触れ、その神官は言葉を失っていた。そして、ティアラの魔法によって、次々と畑に野菜や果物が育っていくのを見て、さらに呆然としてしまう。
「こ、これは、もしや……なんという、なんという、奇跡……」
「神官様、ティアラ様は希少な回復魔法の遣い手でもあらせられます」
「はい、まことに得難いお方なのです」
シスター達が興奮したように口々に神官に話しかけている。
「これは、確かに。本当に、信じられません」
ティアラを見つめながら呆然と立ち尽くす神官と、興奮したようにまくし立てるシスター達をみてティアラはキョトンとする。
「シスター?どうしましたか?お客様ですか?」
「大変失礼致しました、カミール様、アデル様、ティアラ様。こちらは神官のエリック様です。将来の大神官候補であり、『聖人』の資格もお持ちです。本日、急に視察に来られて……」
後ろから追いかけてきた院長先生が慌てて紹介してくれる。紹介されたエリックは、フラフラとティアラのもとにくると突然足元に平伏した。
「なっ!?」
「えっ、ちょっと?神官様?」
アデルとカミールもいきなり平伏したエリックをみて慌てている。
「女神様!……あなたの下僕、エリックでございます」
「「「……は?」」」
やばいものをみたかのようにドン引きする院長、カミール、アデル。キョトンとしたまま首を傾げるティアラ。いそいそと共に平伏しようとするシスター達。ぼーっとみつめる子ども達。
それはまさにカオスだった。
アデルがティアラをそっと背中に庇うように移動すると、カミールが、
「ティアラ、みちゃいけません」
耳元にボソッと呟きながら、ティアラの目を両手でそっと隠してくる。
「どうやらお客様のようだから僕たちはそろそろ失礼させて貰うね?」
兄二人がそのままティアラを抱いて逃げようとしてくるので、ティアラは二人を慌てて押しのけた。
「え、ちょっと待って!お兄様達!神官様がこんなに丁寧に挨拶してくれているのに失礼でしょう!」
「え?いや、あれは……挨拶なのかな?」
「いや、関わらない方がいいと思うぞ?」
口々に言ってくる兄達を無視し、エリックの前にちょこんと座ると、ティアラも同じように平伏してみせた。
「えっ?ちょっと!ティアラ!?」
カミールが慌てて止めようとするが、ティアラは、
「初めまして、神官様。ティアラです」
と言うと、エリックの手を取り、にっこり微笑んだ。
「ご丁寧な挨拶、ありがとうございます。でもね、この挨拶の方法だと二人ともお洋服が汚れてしまうわ。今度は普通に挨拶してくださいね。私のことは、どうぞ『ティアラ』とお呼び下さい」
ティアラの言葉をうっとりと聞いていたエリックは、慌てて立ち上がりティアラの服に付いた土を払う。
「ああ、私としたことがお許し下さい!め…ティアラ様のお召し物が汚れてしまいました!」
オロオロとするエリックを見て、くすっと笑うと、
「クリーン!」
前世では毎日のように使っていた洗浄魔法を使ってみる。キラキラ輝く虹色の魔力が小さな泡となって、その場にいる全員に降り注ぐ。パチンっ!と弾けるとすっかり汚れが落ち、ミントのような爽やかな香りだけが残った。わぁーっと歓声をあげる子供たち。またしても祈り出すシスター達。
「みんな、泥んこになってたからちょうどいいよね?」
ティアラがクスクス笑うと、子ども達も一緒になってクスクス笑い出す。
「神官様!面白い人!急に地面にひれ伏すんだもの。びっくりしちゃった!」
「私のことは、どうぞ、エリックと……」
恍惚とした表情でティアラを見つめるエリックを見て、頭を抱える兄二人だった。
読んで頂きありがとうございました♪
















