第1章 三、すれ違い、そして
航空会社の社員として空港で働く唯が、
中高の仲良し3人で集まっていると、
友達の清さんから連絡があり、合流する事に。
その帰り、清さんから、
医大生の紘太の連絡先をもらった唯は…
慌しい年末年始が過ぎ去った2月半ば、
唯は国家試験が終わったであろう紘太に
連絡をしてみた。
「日本を放浪中で、今、青森」
と、雪景色の写真が送られてきた。
「北海道回ったら、飛行機で帰ります」
その数日後、搭乗手続きカウンターにいた唯は
後輩に声をかけられた。
「芹沢さん、札幌からが到着のお客様から
これ預かっています」
唯は、きっと紘太からだと思い、紙袋を覗いた。
「ああ、友達からのお土産だ。
あとでみんなで頂こうよ」
そう言いながら、紘太に会えなかったことを
残念に思っている唯だった。
勤務が終わり、唯は
紘太にお礼のメッセージを送った。
すぐに紘太から返信が来た。
「すごく食べにくかったでしょ?!
日本一食べにくいお菓子…でも食べると美味しい
っていう有名なお菓子だよ」
唯はクスっと笑った。
「わざとなのね!」
このままやりとりを終えたくない、
そう思った唯は、次の話題を探す。
「今度、旅の写真、見たいな」
「飲み会でもしようよ」
「それって、合コン的な?」
紘太の誘いに、唯は少し逡巡したが、
思い切って返信した。
「みんなとより、二人がいいな」
返信が来るまでの、わずかな時間、
唯の心臓が早鐘を打ったように鳴り始めていた。
「そうだね、そうしよっか!」
唯は、ぱぁーっと目の前が開けたような
気持ちになった。
遅番帰りの疲れた心が軽くなったような
気がした唯だった。