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第11章 二十二、滑走路の向こう側には
石田は照れ笑いを浮かべながら言った。
「元気になった途端に、腹減っちゃったよ。
加瀬さん、時間あったりする?
朝飯食いに行かない?」
朝飯食いに行かない?」
「はい、ぜひ」
石田は着替えると、
利緒と連れ立って外に出掛けた。
街は、昨日までクリスマスだったはずなのに、
あのキラキラした雑踏はどこかに消え、
冬の寒く清々しい朝が、そこにはあった。
「一日寝込んで外に出たら、
街の風景が全く変わってて、
なんか浦島太郎みたいだな」
「そうですね、もうお正月がすぐですね!
あ、初詣とか行きませんか?」
石田は後輩の日下の言葉を思い出していた。
〈煩悩を捨て、仏様を綺麗にして、
清々しくサイコーの年越しを約束します〉
日下、ありがとよ、
サイコーの年越しになりそうだ!!
ただ、新しい煩悩も生まれそうだ…
犬が駆け抜けて行った滑走路は、
明るい年明けに繋がっていそうだった。