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第11章 十七、ヘッドスライディング
石田は廊下の隅に立つと、
勢いよく走り出し、
ヘッドスライディングすべく飛び出した、
その時だった。
人の気配がしたかと思うと、
廊下の角を、日下が曲がってきた。
両手に、バケツを下げて。
バッシャーン!!
スライドしてきた石田に
両手のバケツ2杯分の水が降ってきた。
「何してんすか!」
「ヘッドスライディング…」
「は?」
「ってか、おまえ、気配もなく来るなよ」
「小さい頃から、走っては怒られて
育ってきたんすよ、
そろそろ走らなくなってきた訳ですよ。
もー、風呂入ります?」
「いや、もう帰るから、帰って入るわ」
トレーナーだけ借りると、
日下に余りの精進弁当と饅頭を持たされ
石田は家路についた。