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第11章 十六、すす払い
後輩の日下の剣幕に押され、
24日は朝から、石田はすす払い、
つまりお寺の大掃除に駆り出されていた。
「へー、でっかい寺なんだな」
「そうなんっすよ、
だから若い労働力はいくらあっても
大歓迎なんですけど、
ほら24日は、さすがの俺も
彼女いる人は誘えないから。
石田さんが捕まって、良かったっす」
「悪かったな、彼女いなくて」
「いやいや、ありがたいっす!
じゃ、おばちゃん達がこっちやるんで、
石田さんは力仕事、よろしくです」
朝早くから、広い境内のあちこちで、
掃除や年越しの準備など、やる事は尽きず
気付けば夕方になっていた。
お手伝いのご婦人たちが帰宅すると、
わいわいしていた本堂も
ガランと広く感じた。
磨かれた廊下は、ピカピカに光っていた。
すっげーなー、
これ、めっちゃ滑りそう!
ヘッドスライディングとかしても
どこまでも滑れるんじゃねぇか?
あたりを見回すと、
シンと静まり返り、人の気配はない。
よし、いっちょやってみっか!
石田は廊下の隅に立つと、
勢いよく走り出し、
ヘッドスライディングすべく飛び出した。