第11章 九、トラブル発生
「なんか点検中とか言ってたけど、
何かあったんですか?」
すると、少し声を落として利緒が言った。
「滑走路の点検中なんです。
……実は、他社便なんですけど、
到着したお客様の犬が逃げちゃったみたいで」
「そんな事有るんですか!」
「私も初めてなんですけど。
ペットはお客様のケージでお預かりする事も
できるのですけど、やはり航空会社のケージに
比べると華奢な作りだったりして。
恐らく混乱した犬がケージを壊したみたいで。
一応、お客様のケージの場合、
上にネットもかけてるんですけど、
犬も恐怖の余り、破壊し尽くしちゃったのかな。
搭載さんがドアを開けた途端
犬が飛び出して、滑走路方面に逃げ去ったらしく
ランウェイクローズです」
「そうだったんですかー。
そりゃ犬も、飼い主と引き離されて
一人、いや一匹、暗い貨物に閉じ込められたら
怖いですよね…」
「係員が、餌でおびき寄せたけどダメで、
飼い主さんに、制限区域立入許可証を申請して、
行ってもらってるところだそうです」
「そんな事まで…」
石田が感心していると
利緒は、イヤホンの入っている耳を押さえ、
何か聞き入っていた。
「あぁ、残念ながら、
石田さんの搭乗予定の飛行機、
ダイバートですね」
「ん?」