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第11章 五、理由
しばらく逡巡した様子の利緒だったが
ゆっくりと話し始めた。
「実は長く付き合ってた人と別れちゃって…」
凛がポツポツ話すのを
石井は静かに聞いていた。
「明日、私、誕生日なんです。
毎年、誕生日には、イルミネーションの
点火式に行ってたんですよね。
今年は行けないな、行きたかったなー」
凛は淋しそうに笑った。
「俺、つきあいましょっか?」
「えっ?」
「イルミネーションの点火式とか
行った事ないし、見てみたいなーって…
…ごめん、彼と行きたかったって事だよね、
俺と行っても意味ないんだった、ごめん」
慌てて弁解する石井に利緒は言った。
「行きます。
ありがとうございます、
明日、行きます」
「え、大丈夫なの?
全然無理しなくていいよ?」
「大丈夫です!
イルミネーションのテーマ、
毎年変わるんで、楽しみにしてたんです」
少し無理して笑っているように見えた利緒を
石井は心配そうに見ていた。