第11章 四、出会い
席につき、石田がオーダーしたものの、
約束の15分経ったところで、
まだ料理は来はしない。
加瀬利緒は、早番の史緒里を気遣って言った。
「旗野さん、私、大丈夫なので、
帰って休んでください」
史緒里は「え、大丈夫?」と確認すると、
頷く利緒を見ながら心配そうに、
「うーん… ちょっと石田!
加瀬ちゃんがそう言ってくれてるから帰るけど、
弱ってるからって、可愛い加瀬ちゃんに
何かしたら、ホントしばくからね」
と言い残し、風のように去って行った。
残された2人は、
自己紹介からするはめになった。
「えーっと、旗野の地元の馴染みで、
石田って言います。
大学の研究室に残ってます。
なんかつきあわせちゃって、すみません」
「いえいえ、私の方こそ。
急にこんな事で呼びつける形になって、
本当にすみません。
私、旗野さんの後輩で、加瀬利緒と申します」
「旗野が先輩なんて、大変ですね。
アイツ、キツいでしょ。
説教なんて、話半分で十分ですから」
「いえいえ、旗野さんにはホントにお世話に
なってて…。今日も、仕事でミスしちゃって、
話聞いてもらってたんです」
「あぁ、さっき、旗野が『弱ってる』って…
仕事のミスの事だったんですね」
「いや…その…
弱ってるのは、また別件でして…」
「そうなんですか…
話、聞きましょか?
あー、ほら、知らない人の方が
意外と気楽に愚痴れたりするし」
石田の申し出に、
利緒は少し顔を曇らせた事に気付き、
石田は慌てて言葉を追加した。
「あ、全然無理にとかじゃなくて!
言いにくい事なら全然大丈夫なんで」
しばらく逡巡した様子の利緒だったが
ゆっくりと話し始めた。