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第11章 一、プロローグ
今日は研究があまり捗らなかった。
壁時計を見やると、
まもなく23時になろうかという時、
石田の携帯が鳴った。
着信を見て、軽く溜息をつきながら
電話に出た。
地元の馴染みで、空港で働く旗野史緒里からだった。
「石田っち?今どこ?」
「なんだよ、挨拶もなしに。
まだ研究室だよ」
「だろうと思った。
大学通りのファミレスにいるから、今すぐ来て。
店の中に入らず、駐車場ね!」
今すぐよ!と念を押すと、
石田の都合などお構いなしに
電話は切れた。
は?何だよ!と思う半分、
いつもの事だ…と諦め半分で、
石田は身の回りを片付け、研究室を後にした。
そして、広い大学構内の駐車場から車を出し、
史緒里の指定するファミレスへ向かった。