第10章 十七、潮風に乗って
「こっちに来なかったら、山中さんとも
仲良くなれなかったですしね」
ややあって、旺太郎も言った。
「僕もです。
出向して良かった。
大塚さんと出会えて」
頬をくすぐる潮風は
秋の涼しさが若干漂っていた。
「ここから空港って、近いんですか?」
「そうですね、山道を抜けるとすぐです。
行ってみます?」
ふたりは、凛の働いていた空港へ向かった。
山道を抜けて、
整備された空港道路へ出て、少し走ると、
鮮やかなオレンジ色の橋が見えてきた。
「あのオレンジの橋って、
飛行機を誘導するものですか?」
「そうですね、
雨の夜とか、ピカピカピカーって
よく見えますよ。
この空港はよく霧も出るので」
「へー、あの橋って、歩けたりするんですか?」
「うふふ、それは無理です」
「ダメですか〜」
「以前、興奮した外国人の女の子2人が
興奮しながらカウンターに走ってきて、
同じ事聞いてきて、
一応上司に確認したけど、無理でした」
「どこの国の人も、考える事は一緒だなぁ」
照れた様な旺太郎の笑顔に
凛も頬が緩んだ。
ターミナルビルに着くと、
展望デッキへと向かった。
飛行機が一機、スポットに停まっており、
コンテナを積んでいるところだった。
「こうやって改めて見てると、
一機飛ばすのに、沢山の人が関わってますよね」
凛にとっては普段の光景だが、
旺太郎は熱心に見ていた。