第10章 十三、ビール仲間
それからは、旺太朗の休みの週末などに、
凛の仕事が終わってから
2人はビアガーデンでジョッキを傾けた。
旺太郎も、就航したての路線の様子が気になる
ようで、もっぱら仕事の話をしていた。
「離島乗継のお客様がいらしゃって、
入社時の座学以来、久々に見たスリーコードで、
荷物が他の島に行っちゃわないか
内心ドキドキしましたよ〜、
乗継便も他社だったし。
しかも、お彼岸近いから法事なのか、
結婚式なのか分からないけど、
20名ぐらいいらっしゃって、
しかも、皆様苗字が一緒で。
飛行機の半分ぐらい多分親戚でしたよ」
「機内で宴会が始まりそうですね」
凛にとっては他愛もない仕事の話を
熱心に聞いていてくれる旺太郎を
凛はこのましく感じていた。
話が途切れた時に、
ふと旺太郎が言った。
「若い女性って、ビールより甘いお酒って
イメージですけど、大塚さんはビール党
なんですね」
「甘いお酒も飲みますよ?
でも暑い夏に外で飲むとしたら
やっぱビールじゃないですか?」
「僕はそうですけど…
大塚さんはキレイな人なのに、
なかなか男前な飲みっぷりで、意外です。
ギャップ萌えってやつですか」
最後の一言に、凛はビールが
気管に入りそうになったのを堪えた。
「いや…そんな…
カクテル…とかにしとくべき…
でしたかね…」
「いや、僕はビール付き合ってくれる人のが
嬉しいですけどね」
チラッと盗み見た旺太郎は、
清々しい顔でジョッキをあおっていた。