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第2章 六、同僚との別れ
雪の降りそうな鈍色の空の中、
唯は試験会場に向かっていた。
「試験会場なんて、学生の頃以来だ」
ザワめきながらも緊張感の漂う
試験会場の雰囲気に、気が引き締まる思いだった。
全力は尽くした。
大問も、それらしい数字が導けたので、
多分大丈夫だろう。
翌日、職場で、
上司達が次々と、コッソリ唯に様子を尋ねてきた。
「試験、昨日やったよな、どない?」
「すっごいやらかした、とかはなかったと思うので
多分、大丈夫だと思います。」
それから約1ヶ月経った頃、結果が届いた。
合格だった。
唯が上司達に報告した、その日は、
本社経理センターから、新しい担当者達が
引き継ぎの為に来ていた。
この度採用されたという担当者達は、
イキイキとして見えた。
中岡達は淡々と説明していた。
3月もあと数日となった頃、
退職する中岡、坂下と、
総務へ異動する藤田、
それから定期異動の草津課長の送別会が行われた。
これが会社、組織だとは解っていても、
右も左も分からない新人に、
優しくて指導し、暖かく見守ってくれた
同僚達との別れは、淋しいものだった。