第10章 十一、滑走路脇の土手
翌日も、フライトは順調だった。
仕事が終わると、
旺太朗は出発ロビーで
他社の乗客に紛れて座っていた。
長袖に日傘の完全防備で現れた凛に
旺太郎は驚いた様子だった。
「暑くないんですか?」
「うちの会社、日焼け禁止なんですよ〜」
「え?女優さんみたいですね」
「あは、そこまでは。過度な日焼けが
禁止なだけです」
談笑しながら、
2人は滑走路エンドの方に向かった。
「こっちは大きな公園なんですね」
「そう、運動公園です。
陸上トラックとかサッカー場とか、
テニスコートは、アウトのボールも
飛行機のせいで中に入っちゃうとか
ホントなんですかねぇ」
滑走路エンドを回り込んで
2人は滑走路脇の土手にやってきた。
「へー、ホントに滑走路のすぐ脇ですね。
今日は暑いけど、
良い季節だと、気持ち良いでしょうね」
旺太郎は感激した様子だった。
他社の小型機が着陸するのが見えた。
スポットに向かってタキシングする小型機に
向かって少し歩いてみたが、
9月の残暑はまだ厳しく容赦なかった。
「あっついな〜、
ビール飲みてー」
「いいですね〜、ビール。
あーでも空港周辺、工場とか運動公園とか…
ビール飲めるような店ないんですよね」
「僕、スクエアホテルの横のウィークリー
マンションに住んでるんですけど、
スクエアホテル、ビアガーデンあるみたい
ですよ」
「ビアガーデン!よし、そこにしましょう!」
ふたりは涼を求めて
ビアガーデンへ向かった。