第10章 五、慣熟飛行
翌日は、タイムテーブル通りに
慣熟飛行が行われ、
旅客代理店や関係者が搭乗する事になっていた。
「私たちは乗れないんですね、
かなりの関係者だと思うんですけど」
残念そうに凛が言うと、純礼が言った。
「私たちがハンドリングしなかったら
お客様、搭乗できないでしょ」
「あぁ、そうですね」
凛は納得したようだ。
9:25、定刻で一番機がやって来た。
8月末のまだまだ残暑厳しいエプロンで、
全スタッフがランディングを見守った。
遠くに見えた小さな白い点が
次第に大きくなり、
飛行機の形となると、
ゴーっと音を立て、着陸した。
初めてハンドリングする小型ジェット機は
小さいなりに、とても綺麗な機体だった。
スタッフたちの中から
自然と拍手が起こった。
搭載の荒井が、
ほー、頭から突っ込んでくるんだなぁ、
と感心して呟いた。
怪訝な顔をする凛に、荒井は
「普通、飛行機はランディングする時
機首を上げて降りてくるんだよ。
でもこの飛行機は、
普通に頭から突っ込んできたな」と説明した。
滑走路のエンドから
これからハンドリングが始まる小型機が
タキシングしてやってくると、
無線を持った凛は、スポットへと急いだ。
搭載課の荒井がマーシャリングをしている。
係員の少ないこの飛行場では、
搭載要員がマーシャラーを兼務している。
大きな旅客機はゆったりとスポットに
入るのに対し、
小型機はシューっとやってくるな、と
凛は感心していた。