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番外編 五、意を決して
押し付けられた紙袋を下げて
松本はまだ混乱した頭を整理していた。
車に乗り込むと、決意して
名刺に書かれた携帯番号を確認しながら
電話の番号を押した。
ツーコールで繋がった。
松本は慌てて話し出した。
「あの、先日の事故の時の松本です!
空港職員の松本です!」
「あ!松本さん、恵比寿です、
お電話ありがとうございます」
「いえいえ、お礼を言うのはこちらで…
あの、お菓子頂いちゃって…
さっき、あの、同期から受け取って…
こんなの良かったのに…」
「いえ、あの時、私、気が動転しちゃってて
松本さんのご連絡先はおろか、
お礼すらちゃんと言ったか怪しくて…
しかも、肝心のお借りした傘、
持って行くの忘れてまして」
「あぁ、ビニール傘ですから
処分してもらって良かったのに。
そこで修理でもしたならあれですけど、
JAF呼んだだけですから」
「でも、傘…」
「じゃ、今度飛行機に乗る時、
カウンターにでも預けて下さい」
「結構、先になりますけど、
大丈夫ですか?」
「全然大丈夫ですよ」