番外編 三、空港で
それから数日経ったある日、
絢華は空港のカウンターを訪ねていた。
「すみません、松本さんという方、
いらっしゃいますか?」
カウンターの女性係員は
少し不審そうな顔をした。
「申し訳ございません、
松本という係員はおりませんが…」
固まる絢華に、係員は言った。
「あの、どういったご用件でしょうか、
もしよろしければ、お伺いいたしますが」
「えっと、25日の最終便を利用しまして、
その…実は車が故障してしまって、
こちらの職員の方にお世話になりまして」
「あぁ!大変失礼いたしました!
搭載課の松本ですね、
すみません、てっきり女性係員かと
早とちりしていまいました。
出社しているか確認いたします」
弾けるような笑顔でそう言うと、
係員はバックヤードへ引っ込んだ。
しばらくして、出てきたが、
「申し訳ございません、
松本は本日早番で、もう退社したようです」
と、本当に申し訳なさそうに言った。
そうですか…と力なく言った絢華に
係員は、何か伝言などございましたら、
お伝えいたしますが、と言った。
絢華は、菓子折の入った紙袋を出し、
これ、お渡し頂けますか?と言った。
紙袋の中を覗いた係員は
「その様なものはお預かりできないのですが…」
と断ったが、困り顔の絢華に言った。
「あの…、実は私、松本とは同期でして。
故障した車の件、存じております。
松本のお知り合いの方からの預り物を
松本の友達として受け取ると言う形でしたら、
恐れ入ります、バックヤードの方に
お越しいただいてもよろしいですか?」
説明された通路に向かうと、
先程の係員が駆けてきた。
「すみません、規定上、物を頂く事、
できないんですけど、
松本本人からお話を聞いてますし、
お名刺も入れて頂いてるようなので…」
必ずお渡しいたします!と言って
紙袋を受け取ると、係員はまた駆けて行った。