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第2章 四、新しい挑戦
季節は秋と言うのに、
昼間はまだ暑いぐらいの日が続いていた。
紘太は遅めの夏休みを取ったが、
一人で南米に放浪に出てしまった。
唯の会社では、
連結会社に経理システムを導入するとかで
杉浦や、ベテランの山川、中岡は、
それぞれ市内や隣県などに出張していた。
「杉やん、いたはる?」
「山川センセに聞きたい事あんねやけど」
「中岡チャンをお願い!」
内線が鳴り、唯が出るけども、
営業さん達のお役には立てそうもなかった。
帰り、唯は本屋に寄っていた。
手に取っていたのは、簿記3級の問題集だった。
唯は、空港で働いていた頃の休日は、
誰とも休みが合わないので、
茶道に着付け、料理にパン教室など、
様々な習い事をしていたのだが、
仕事内容が変わる事で、
休みの過ごし方も変わっていった。
自分の足りない所を補うべく勉強した。
相変わらず紘太は、
ほとんど休みもなく働いていたが、
それでも、たまの休みの前の日には
唯が夕食を作って待っていた。
数ヶ月に一度しか会えなかった頃に比べれば、
断然嬉しいと唯は思っていた。