番外編 一、プロローグ
最終便が到着し、
冷たい雨の降る中、スポットへと進んできた。
松本佑司はボーディングブリッジを操作し、
飛行機につけた。
22時近い平日の最終便からは
お疲れ気味のビジネスマンが
次々降機しては足早に去って行った。
ラストまでの勤務が終了すると、
上司や同僚たちは空港ビル横の職員駐車場に
向かったが、下っ端の松本は少し離れた
公営駐車場をあてがわれていた。
そこは斜面を切り拓いた台地になっており
駐車場の出入口は、スロープになっていた。
松本は車を出すと、出口に向かった。
精算機に定期を突っ込み、
スロープを下りかけた時、何かに気付いた。
スロープを下りたすぐ右手に、
クラッシックな小さな車が
やや傾いて停まっており、
側に女性が小雨の中、立っていた。
松本は、その車の横に停まり、
窓を開けると、大丈夫ですかーと
大きな声をかけた。
女性は、脱輪しちゃったみたいで…と
弱々しく答えた。
松本は、自分の車をその車の前に停め
降りると、女性に近付き、
ひらいた傘を差し出した。
少し驚いた顔の女性に、
松本は、大丈夫ですか?と声を掛けた。
「そこのスロープで、
なんかブレーキ効かなくて、
パニックになって、脱輪してしまいました」
「そうだったんですか、
JAFは呼びましたか?」
あ、そうか、と女性は小さく言った。
「俺、電話しましょうか?
会員証とか持ってますか?」
松本はJAFに連絡して
状況を説明して依頼をした。
「2、30分で来てくれるそうです」
「そうですか、すみません、
すっかりご迷惑をおかけしてしまって」
「雨降ってるんで、
俺の車で待ちますか?」