第9章 十四、返しに行くはずが
小松さん…とささやく声で
純礼は目覚めた。
「スミマセン、ベッド!」
「いいの、いいの、
よくソファーで寝落ちしてるから」
「フリース、洗濯して返すので、
連絡先、教えてもらっていいですか?」
「いいよ、洗濯なんて!
まとめて洗濯するから」
純礼はフリースを鞄に押し込むと
ケイタイを取り出して、
連絡先教えて下さい!と再び言った。
岩瀬は、まいったなぁと言いながら、
連絡先を教えた。
それから、年末年始と忙しくて
純礼と岩瀬はなかなか勤務が合わず、
フリースを返せないまま、
すっかり年明けになっていた。
今日こそは、と思って純礼は
仕事帰りに岩瀬に連絡した。
岩瀬は休みで在宅で、
純礼は家に届ける事にした。
純礼が岩瀬の家に着くと
美味しそうな匂いがしていた。
「いらっしゃーい!
ちょうど魚の煮付け作ってたんだよ、
良かったら一緒にどう?」
「え、いいんですか?」
「うん、もちろん!
小松さん来るなら鍋にすれば良かったよ。
搭載の木本君が釣ってきた魚くれてさ、
さすがに一人で鍋はなぁと、
取り敢えず煮付けにしてみたんだけど、
メバルとウマズラハギ」
「す、スゴイ…本格的ですね…」
それから純礼は、
たまに岩瀬の家で手料理を頂いたり、
外食したりした。