第9章 十一、冬タイヤにチェーンで
「家、ドコでしたっけ?」
「溝畑です」
「あー、溝畑ですか、
あの辺、側道から逸れると、
まさに畑と溝ですよね。
んー、ウッカリしたら畑に突っ込むな。
ま、取り敢えず近くまで行ってみましょう」
「適当に下ろしてもらったら、
歩きますんで…」
北国のように道路と外の境目の標識もなく、
雪の降り積もった道は、
降りしきる雪による視界不良もあって、
純礼の運転技術では、とても太刀打ち
できそうにはなかった。
恐らく空港で働く職員が付けたであろう
轍を辿って進んで行った。
「岩瀬さん、冬タイヤですよね」
「当然!」
「冬タイヤの上にチェーンって
巻けるんですね」
「巻けるよー、知らなかったー?
やっぱ、これぐらいの雪になるとね、
チェーンも巻くと気持ち安心するよね」
「子どもの頃、雪降った次の日、
バスとかがチェーン巻いて
シャンシャンいってたけど、
岩瀬さんのはいわないんですね」
「あぁ、あれは金属のチェーンね。
僕のは樹脂製だから。
スパイクピンも付いてるんだよ」
「え?金属じゃないのもあるんですか、
樹脂製とかって、大丈夫なんですか?」
「えー、大丈夫だよー、
最近のは性能がいいからねー」
「しかも結構すぐ付けれるんですね」
「もう何年もこの職場通ってるからねぇ、
やっぱ、たまに装着する事、あるよ」
雪に対する認識の甘さを
反省する純礼であった。
それから、仕事の話へと話題は移った。
「結局、結局ダイバートしましたね」