第9章 十、想定外の積雪で
搭載課の課長と、岩瀬だった。
「あれー、小松さんじゃないですか」
「おぃ、お前、この雪で帰れるのか?」
「ちょっと、想定外で、
どうしたものか考えあぐねてました」
純礼の弱気な答えに、課長が言った。
「おぉ、無理すんなよ、
事故ったら凍え死ぬぞ。
家はどっちだ?」
「西方面です」
「おぅ、そんなら岩瀬、送ったれ」
「でも車置いて帰ったら、
出社する時、困ります」
「おまえな、タクシーでも何でも来い!
死んだらどうもならんぞ」
課長に一喝されてシュンとなった純礼に
岩瀬は言った。
「小松さん、寒いですし、取り敢えず
僕、送りますから。
出社は、また誰かに乗せて貰ったら
いいじゃないですか、何とかなります」
「ハイ…スミマセン…」
従った様子の純礼を見ると、課長は岩瀬に
お前も運転気を付けろよ、
嫁入り前のお嬢さん乗せてんだから!
と言って自分の車へと向かった。
岩瀬は純礼を車に乗せると、
後ろをゴソゴソしていた。
冬タイヤだけど、念の為
上にチェーンも巻きますから
ちょっと待ってて下さい、と
外で作業を開始した。
手際良く、すぐに作業は終了し、
岩瀬も車に乗り込んだ。
「じゃあ、安全運転で帰りますね!」
「スミマセン…お世話になります…」