第9章 七、ミーティング
純礼の職場では、
第一月曜日の早番終わりに
〈月並〉と呼ばれるミーティングが行われ、
事前に挙げられたテーマについて
話し合う機会があった。
それは強制ではないが、
会社側からおやつが用意されるので、
時間のある係員は比較的参加していた。
そして、そのミーティング終わりには、
翌月のテーマが決められる。
月並に参加した純礼は
次月のテーマとして、
数日に渡ったお手伝いの必要なお客様の
ケアについて、を提案した。
そして、言い出しっぺとして、
翌月の月並の日は早番のリクエストを出し、
気合入れて参加した。
OJTが終わり独り立ちした岩瀬も
参加していた。
「先月、県下で全国障害者スポーツ大会が
行われ、お手伝いの必要お客様のケアを
する機会が多くありました。
この機会に考えた事や、今後役立てたい事
などありましたら、発言願います」
司会の呼び掛けに
次々と発言があった。
「WCHC(※4)のお客様であっても
車椅子スポーツの選手の方がたは
ご自身で座席から車椅子へ移動できるので、
女性係員でもケアができます。
なので、男性係員には、お客様の車椅子を
早くシップまで持ってくるケアを
お願いできれば、スムーズだと思いました」
「シップサイドから到着ロビーまで、
ルートが廻り道過ぎると思います。
到着ロビーに降りるエレベーターがあれば
いいのにと思います」
「小型ジェット機のケースなのですが、
ボーディングブリッジがつかないので、
ステップは係員がおんぶという形になります。
女性のお客様の場合、男性係員に
おんぶされるのは嫌だと思うので、
ボーディングブリッジをつける事は
できないのでしょうか」
「聴覚障がい者の方は
アナウンスが聞こえないので、
搭乗開始時刻やゲートを書いて渡せる紙を
用意しておくのはどうでしょう」
「視覚障がい者の方にご案内する時、
クロックポジションという方法で
方向をお伝えする事ができます」
「視覚障がい者や聴覚障がい者の方たちには
後ろから肩を叩いたりせず、
必ず正面からご案内しないといけないと
思いました」
これらの提案事項や意見、要望は
まとめて本社に報告された。
(※4) WCHC: おひとりでの歩行が不可能な乗客