第9章 五、順調な訓練期間
新山主催の懇親会のおかげか、
純礼と岩瀬の緊張感は和らいだ。
そして初めての繁忙期とも言える
連休がやってきた。
曜日の関係上、4連休という事で、
初日から空港は賑わっていた。
平日と違い、大きな荷物を預ける乗客たちに
岩瀬は緊張感を持って応対していた。
いつもは手荷物カウンターなどには来ない
ベテランの長峯も冷やかしに来た。
「岩瀬君、どうよ、バゲトラ(※2)ならないよう
励んでるかい」
「長峯さん、恐ろしい事を…」
「宮古と三宅島がスリーレター似てるじゃん、
新人の時、ドキドキしながら預かってたわ。
しかも経由地の那覇と羽田も、
出発時刻が近いから、預けに来るのも
ごちゃ混ぜでさぁ」
「そんな、ここにいる人たち、
三宅島に飛んでたの、知らないですから」
ベテランならではの会話だった。
岩瀬のOJTは順調で、
もう独り立ち出来そうではあったが、
シフトが組んであったので、
予定通り、1ヶ月間続けていた。
出勤しミーティングが始まると、
課長の大西が引き継ぎ事項を伝えた。
「今月28日から、
全国障がい者スポーツ大会が開催される為
今日あたりから、障がいをお持ちの方が
続々と到着されます。
選手の方がたは、
比較的ご自分で出来る方が多いですが、
AT(※3)ナシの方も多いので、ケア、ヨロシク」
(※2)バゲトラ:バゲージトラブル、この場合は預けた荷物が目的地と違う空港に行く事。他に、違う人が間違って荷物を持って行ったり等もある。
(※3) AT : 付添の方