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第8章 八、初めての約束
ちとせは仕事が終わり車に急ぐと、
車の中から悠馬に電話した。
悠馬はすぐに出た。
「おつかれー、仕事終わった?」
「遅くにすみません」
「いやいや、ちょうど帰宅したトコ。
俺の今日の夜は長いから。
出張ばっかの一人暮らしなんて、
たいして荷物ないと思ってたけど、
5年も住めば、なんだかんだ
要らないモンが増えてるわ」
「5年もいらしたんですね…」
もっと早く知り合っていたら…などとは
思っても、とても言い出せない。
明後日の約束だけして、
準備で忙しそうな悠馬との電話を終えた。
翌々日、悠馬は大荷物で
ちとせの職場に現れた。
「君の職場は、この大荷物が、
一番違和感ない場所だな」と、笑いながら
悠馬はスーツケースをロッカーに預けた。