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第8章 六、顔見知りになって
航空券発売カウンターにいる事が多いと
ちとせが伝えてから、悠馬は出張の度に
発券カウンターを覗くようになった。
「梶様、事前に発券済みじゃないですか、
用もないのに、邪魔しに来ないでくださいよ」
「用は、松下さんにいってらっしゃいって
言ってもらう事でしょー」
「ハイハイ、いってらっしゃいませ!」
「ヒドイなぁ、こんなに貢献してるのに〜」
悠馬は、いってきまーすと去って行く。
こんな冗談を言い合っているのも
どれぐらい続いたのか、
ある時から、パッタリと悠馬は来なくなった。
悠馬の姿を見なくなって数ヶ月は経った。
何かあったのではないかと心配する
ちとせであったが、
連絡先を知っている訳でもなければ、
悠馬は、ただよく乗る客に過ぎないのであった。