第8章 五、羽田便ゲート
「あ、でも、今日も長時間勤務なので、
もし梶様が次の羽田便にご搭乗されるの
でしたら、私、担当いたします」
「え、そうなの? 楽しみだなぁ」
それから、短い休憩時間ではあったが、
しばし2人は話した。
「よく札幌に行かれるのは、お仕事ですか?」
「そう、北海道担当なんだ。
冬とか、かなり向こうにいるよ」
「何かウインタースポーツなど?」
「いや、そうじゃないんだよ、
そっちなら楽しかったんだけど」
悠馬は笑いながら続けた。
冬は雪に閉ざされて、お客さんも
出られず、会社や店にいるんだよ、
だから冬は、道内を商売行脚よ。
どうせ道内を巡るなら、良い季節が
よかったけど、そうもいなかいよね〜」
沢山喋るには時間が短過ぎた。
ちとせは、ギリギリのところで
仕事に戻った。
ちとせは、羽田便のゲートに
スタンバイした。
ちとせのアナウンスで
搭乗は始まり、ゲートには長蛇の列が出来た。
その列が落ち着いた頃、
悠馬は楽しそうにやって来た。
気付いたちとせが
いってらっしゃいませ、と言うと、
悠馬は嬉しそうに、行ってきます、と答えた。
ちとせは、お気をつけてと返すと、
悠馬は、うんとまた嬉しそうに答え、
飛行機に乗り込んだ。