第8章 二、問い合わせ結果は
バックオフィスに戻ったちとせは、
上司に顛末を話した。
「トラブってるの?クレームになってるの?」
上司は聞いてきた。
「いえ、特にトラブってもクレームにも
なっていません」
「じゃあ、もう、いんじゃないの?」
「はぁ、まぁ…」
「これ以上はもう、エリート会員デスクに
問い合わせて」
上司は面倒くさそうに話を打ち切った。
ちとせはエリート会員デスクに電話すると、
また同じように説明した。
「なるほど、事情は了解しましまた。
それで、かなりクレームになっている
ようでしょうか?」
デスクの担当者も、同じ様な反応だった。
クレームにならなきゃ対応しない訳?と、
ちとせは内心ガッカリした。
「いえ、特にクレームとか強く言われた
訳ではなく、ただちょっと理不尽に
思われているようなので、
問い合わせた次第でして」
デスクの回答は、
決まりなので、どうにもならない、
それ以上でも以下でもなかった。
わかっていた事ではあったが、
もう少し何か他に報告できる事が
あれば良かったのに、と、ちとせは
不承不承ラウンジに戻った。
「梶様、申し訳ございません、
エリート会員デスクに問い合わせましたが、
回答は同じでした。仰る通り、
梶様には全く非がございませんのに…」
ちとせが申し訳なさそうな顔で言うと、
梶 悠馬は笑いながら言った。
「いやーゴメンゴメン、なんだか、
すっかりクレーマーになっちゃって。
えーっと、松下さん?」
悠馬はちとせの胸元の名札を読み上げた。
「松下さんが、こうやって
納得いかない顔で共感してくれて、
問い合わせてくれただけで、
俺はもうスッキリしたよ、ありがとね」
悠馬は笑顔だった。
ちとせは、申し訳なさそうに、
カウンターへと戻った。
それから30分余りして、
悠馬は、ありがとう、と旅立って行った。