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第7章 二十、夏休みの空港
夏休みの空港忙じさは、
海との思い出にクヨクヨする余裕を奪い、
夏帆は日々の仕事に追われていた。
8月も終わり、
やっと空港が落ち着いた頃、
夏帆は到着の誘導の為、
ボーディングブリッジでスタンバイしていた。
ボーディングブリッジの階段を
駆け上がってきたオペレーターは
松本だった。
「よぅ夏帆っち、誘導珍しいな!」
「たまにはね」
「小牧、新しい部署で頑張ってるみたいだな」
「ん? さぁ、多分」
「あれ、連絡取ってねぇの?」
「何度かはね」
「あれー、何だよ、おまえらイイ感じ
だったじゃねぇかよ?」
「んー、そんな事もあったかもしれないけど、
私の思い違いかもねぇ」
「いやいや、俺も木本さんも、
そう思ってたぞ?」
「んー、私もそう思ったりもしたんだけど、
なんか途中から、そうでもなかったみたい」
しばし黙った松本が告げた。
「まぁさぁ、小牧もあれで新人君な訳で、
かたや夏帆っちは、小牧のOJTしてたん
でしょ? 知識と経験の差を前に、
ヤツも、イっちゃっていいのか、
ちょっとビビっちゃっのかね」
そして到着便がランディングし、
その話はそこまでになった。