第7章 十九、ラストの日
1ヶ月はあっという間に過ぎ去った。
ラストの早番が終わり、
仕事終わりのミーティングで海が挨拶した。
「皆さん、本当にお世話になりました。
全くの新人の僕に、沢山の現場を
教えて頂き、心より感謝しています。
ここでの3ヶ月は、何にも代えがたい
僕の力になっていくと思っています。
ありがとうございました」
いつもの人懐こい笑顔だった。
皆に拍手で送り出され、
今まで3ヶ月送り出していたゲートから
飛行機に乗り込んで行った。
夏帆は搭載に下りると、
松本がいた。
「おぅ、夏帆っち、
小牧、この便で帰るだろ?
なんでこんなトコいんだよ」
夏帆は困ったように言った。
「んー、なんか一人で見送ろうかなとか…」
「ふーん、トーイングカー、乗るか?
小牧の事、飛行機ごと、送り出してやれよ」
「んー、それは松本がしてあげなよ。
私はランプから見送るよ」
「じゃ、整備さんとかと一緒に
ランプの向こうまで行って見送れば?
整備さんに言っといてやるよ?」
「いーの、いーの、一人で見送るから」
「そう? 俺、もう行かなきゃだから…」
そう言い残すと、松本は走って行った。
夏帆は少し離れた所から、一人見送った。