第7章 十六、観光
翌日、昼前に夏帆は海を迎えに行った。
研修でこちらに来たものの、
特に観光などはしてないと言う海に
坂と海と寺院の有名な観光地から案内した。
少し小高い坂の上の寺院から見下ろす
海と街の眺めも良かった。
寺院の土産屋を覗いたり、
路地でネコを構ったり、
まったりと時間はゆったり流れた。
それから海辺をドライブしながら戻り、
前日とは別の海辺のレストランで夕食を取った。
楽しい一日だった。
食事が終わり、車に乗り込んだものの、
一日一緒に過ごしたのに、
これで別れるのが名残惜しかった。
が、それも言い出し難く、
何となく車を走らせた。
ふと標識に目が行った。
〈 ← △△大橋 〉
そしてその先には
〈県民の浜 △△大橋渡る〉
「あ、ここも同期と行った事あります。
海キレイでしたよ〜。
私運転してなかったけど、道分かるかな」
「急ぐ旅でなし、行ってみますか!」
橋を渡ると、島の道は街灯も少なく
薄暗かった。
標識に従い、もう一つ橋を渡り、
しばらく行くとビーチが広がっていた。
駐車場に降り立ったが、
平日の夜の県民の浜には誰も居なかった。
2人はビーチの方へ向かった。
「うわ、サンダルだと、足砂まみれ〜、
脱いじゃお」
「俺も靴脱いじゃお」
波に足をつけると、幾分涼しかった。
「今日暑かったですもんね、
迎えに来た三沢さんが、随分夏の装い
だったので驚きましたけど、
十分それぐらい夏でしたね」
まだ6月ではあったが、夏帆はノースリーブの
バカンスに行くかのようなワンピースだった。
海が言うと、夏帆は得意げに言った。
「梅雨の晴れ間って、気温上がるんですよ?
空港で働く者は、天気に詳しくなる、
今日暑くなるのは、私たちには
分かりきった事だったんですよ」
「なるほど、天気、大事ですね。
今回もディスパッチの方、ラスト、
雲が抜けるって予報立ててましたもんね。
その予報からの、あの一方送信、
鳥肌モンでした」
「日が暮れても暑いねー、
夏、海、と来たら、ビールですよね、
ビール飲みたーい!」