第7章 十二、早番で
早番のミーティングが始まり、
上司が引き継ぎ事項など話し始め、
昨日の状況を簡単に説明した。
「昨日、遅番で、今日、早番の人」
上司が尋ねると、夏帆と海が手を上げた。
「三沢さんと小牧君か、大変だったね。
お疲れのとこ申し訳ないね。
勤務時間終わったら、チーンで帰ってな」
軽く労われて、普通に勤務は始まった。
2人は苦笑した。
その日は、隙を見つけては
同僚たちが、前日の状況を聞きに来た。
なんとか早番をやり過ごし、
定時になると、上司に追い出された2人は、
トホトボ退社していた。
「三沢さん、大丈夫ですか?
もし運転できそうにないって、少しでも
不安があるなら、俺の部屋で休んで行って
下さいよ?」
「いやいやいやいや、大丈夫!
もう大丈夫だから!昨日はホントすみません!」
「でも居眠り運転で事故とか、俺、心配で」
「大丈夫、大丈夫。万が一寝そうになったら
路肩に寄せて、車で寝るから、ね」
「そんな、トラックの運ちゃんかよ」
ハハ、似たようなもんよ、と
夏帆は手をヒラヒラ振ると駐車場に向かった。
職員用駐車場で車に乗り込み、
フゥと溜息をつくと、
改めて今朝の事を思い返していた。
もちろん何も無かったとは言え、
海の部屋で一晩を過ごし、
多分寝顔も見られ、風呂上りもみられ
スッピンも見られ、
まぁスッピンは、海でもほぼスッピンだったけど、
何か、色々恥ずかしい、
思い返せば返すほど、恥ずかしい。
一人、車内で赤面していると、
窓ガラスをノックされた。
コーヒーを持った海だった。
慌てて窓を開けると、
せめてコーヒーでも、と海が渡した。
手に2人分のコーヒーを持っていたのを見て、
あ、助手席、乗ります?と誘うと、
海も素直に、じゃあ、と乗ってきた。