第7章 十一、気が付いたら
「三沢さん、起きれますか?
早番、行けそうですか?」
海の心配そうな声が聞こえてきた。
え?小牧さん? 夢?
ぼんやり目を開けると、
なんだか見知らぬ天井。
まだ夢?
声で起こす目覚し時計ってあったよな、
小牧さんの声で起きるとか、
目覚め良さそう…
そんな事考えていると、
夏帆の目の前に海の顔が現れた。
「大丈夫ですか?」
朦朧とした意識が一気にクリアになった。
「え? 小牧さん? なんで? ここドコ?」
「覚えてないんですね。
昨日、遅番終わった帰り、通用口のトコで
三沢さん、倒れたんですよ。
だから俺の部屋に連れてきました。
大丈夫です、俺、ソファで寝ましたから」
情報の処理が追いつかないが、
何となく事態は飲み込めた。
「今、5時です。そこ、シャワー使って下さい」
言われるがままに、夏帆はシャワーを借りた。
化粧直し程度のメイク道具しかなかったけど、
それは仕方ない。
部屋に戻ると、海がコーヒーを入れてくれていた。
頭もハッキリしてくると、
この状況をどうしたら良いのか、
逆に気持ちが混乱してきた。
「昨日の帰りに通用口に小牧さんが居たのは
何となく思い出せました。
そこで私、倒れちゃって、小牧さんが
部屋に連れて来てくれたって事なんですよね?
すっかりご迷惑をお掛けしたようで、
ホントスミマセン。
会社の借りたホテルに上がり込むような事。
お恥ずかしい事限りないです」
「事態が事態でしたから…」
「コーヒーご馳走様でした!
色々ご迷惑をお掛けして、スミマセンでした
私、先、行きます」
夏帆は立ち上がり、ペコリと頭を下げると、
そそくさと部屋を後にした。
空港脇のホテルから、
辺りをキョロキョロ確認したがら
職場の通用口へ急いだ。
多分誰も見てなかった。
よく眠れてハッキリした頭で
出勤する事ができた。