ビギナーズガーデン2
意識が浮上し目を開けると、天井が目に入った。
起きたことを感知したのか倒れていた椅子がゆっくりと起き上がる。元の位置に戻ると、足の拘束が取れる。体を伸ばし強張りをとる。ヘルメットを外し椅子に置くと、椅子の上部からアラーム音が聞こえてきた。スティックが出ていることを知らせていた。スティックを引き抜き音が止まるのと連動するように、閉まっていたドアが開く。
ドアの外から誰かが動いている音が聞こえる。遊び終えた人が帰っているのだろう。
リュックを拾い上げ、スティックを入れるときお腹からグゥーっと音がする。
「腹減った」
携帯電話で時間を確認すると夕方の五時過ぎだ。おもいっきり昼食を抜いていた。
ゲームの中で食事はしたが、現実の空腹を満たせるわけがない。腹が減っていて当然だ。
「コンビニでもよろう。
明日からゲームする前に軽く食べるか、一時中断しないと同じことするなぁ。気をつけとかないと」
グーグーとなるお腹を押さえ、ボックスから出る。
エレベーターの前に立つ勇の隣に人が立った。何気なくそちら見ると、エレベーターの現在位置を見上げているその同じ年の女は見知った人だった。
「立瀬?」
「え? 岸川君?」
勇が見知っていて当然だった。同じ高校のクラスメイトなのだから。
彼女の名前は立瀬都。腰までの栗色の髪を緑のリボンでひとまとめにして流し、メガネをかけて大人しそうな雰囲気を持つ。
ただのクラスメイトならばフルネームなど知らない。それなりに付き合いがあり、そのときに名前を聞いたのだ。一学期にあった体育祭、その実行委員を決めるときジャンケンで負けた勇は、同じく委員になった都と仕事をこなしたのだった。大人しそうな雰囲気を持つ彼女は断ることができず委員を押し付けられたのだが、その仕事ぶりは真面目で勇よりも上手くやっていた。誰に指示を出すとき戸惑うと思っていたのだが、見かけによらず人を使うのが上手かった。そのことに勇は声には出さなかったが、感心しっぱなしだった。
「立瀬もここで遊んでたんだ」
「うん」
「俺は最終クローズに当選して今日からなんだけど、立瀬も似たようなもの?」
「私はテスター第一陣から」
すでに七ヶ月ほど遊んでいることになる。
「父親がゲーム関係者?」
テスター第一陣は全員このゲームの関係者なのだ。開発者の友達だったり、子供だったり、親戚だったりだ。開発者自身は調整しなければいけないことがあって、その当時はまだまだ遊べる状況ではなかった。
「伯父さんが関係者で、私にテスターになってみないかって話がきて」
「そうなんだ。そんなに早く遊べて羨ましい。
お、エレベーターきた」
二人は開いたドアに入る。一階ボタンを押しドアを閉めた。
「ゲームが開始されたときは、今みたいに長く遊べなかったけどね。
いろいろ不都合もあったし」
ゲーム開始直後は三つのゲーム全て、遊べる時間は二時間程度だった。そこから細かく問題点を探り、新たに生まれた問題を解決し、この最終クローズにあわせるように今の時間になったのだ。フィールドもビギナーズガーデンから出てセントラルだけしか移動できなかった。大きなバグはゲーム開始前に粗方とっていたが、小さいものはまだまだあったりしたのだ。
そんなことを都が話していると、勇のお腹が盛大に鳴った。
「昼抜いてたから」
それに小さく笑みを見せる都。
「よかったら一緒にここの隣にある喫茶店に行く?
私もときどき利用するんだ。スティック見せたら少しだけ割引きくよ?」
「そうしよっかな」
我慢できないしと頷く。
二人は受付近くの回収箱にボックスカードを入れて、受付嬢のありがとうございましたという声を背に建物を出る。
喫茶店には勇と同じようにゲームを遊んだあと空腹を感じた者たちがいて、そこそこ賑わっていた。隣に建物ができて、空腹を感じた者が身近な喫茶店に入るようになり売り上げが増した。味は悪くないのだから、客足が遠のくこともない。売り上げが増したことを隣の建物のおかげだとわかっている店長は、スティックを提示すれば割引をすることにして、さらに客を集めることを考えたのだった。ほかにメニューの増加、店員の増加、接客指導、営業時間延長という経営努力の結果、今の売り上げに達したのだ。近々、店を大きくする予定もあるようだ。
勇と都は空いている席に座り、注文を決めていく。
「ずっとゲームしてるとメニューに触れてウィンドウ開こうとしそうじゃない?」
勇がふと思ったことを言う。
「何度か経験ある」
都と同じように、勇の言葉が聞こえていた客の何人かが思わず頷いた。
「ついやっちゃうんだよね。んでやったあとに恥ずかしくなって回りを見たら、温かい目で見られてたことある」
「その人もやったんだろうな」
こんな何気ないことを話ながら料理がくるまで暇を潰す。実行委員という仕事をこなしたおかげかアヤネと話すときように緊張はしない。都も同じようで出会った当初のような硬さはない。
運ばれてきた料理を食べることで一時会話が中断される。
まっていましたと勇は手を合わせてから手早く食べていく。都はマイペースでよく噛んで食べていく。
勇がごちそうさまと手を合わせたときも、都は食べていた。食べているところを見るのは失礼かなと視線を店の中に巡らせる。そうしているとフォークを置く音がした。
「ごちそうさま。食べるの遅くてごめんね」
「いやいいって」
このあとなにか用事があるわけではないのだ、遅すぎない程度ならばイラつくこともない。
「岸川君って行儀いいんだね。いただきますとごちそうさまって手を合わせてるし」
「小学校の頃ずっとしてただろ? だから癖になってんだ」
「私はときどき忘れちゃうけどね」
「俺もそうだけどな」
再び会話が始まり、ゲームの話へと移っていく。
「立瀬ってギルドに入ってる?」
「う、うん。入ってるよ」
なぜ少しどもったのかわからず勇は不思議に思うが話し続ける。
「ビギナーズガーデンから出たらどっかのギルドに入りたいんだ。立瀬の入ってるところに俺が入れるが聞いてくれないか? 無理にとは言わないけど」
「大丈夫だよ。うちは特別なことしてるわけじゃないから。皆で集まって楽しもうってだけだし。来る者拒まず、去る者追わずだから。
でも……」
「でも? 知り合いが入ると恥ずかしいとか? それなら遠慮するけど」
「そうじゃなくて! えっとね……」
恥ずかしそうにしている都だが意を決したように口を開く。
「私ギルド長なんだよ」
「……ちょっと驚いたけど、そんなに恥ずかしがることでもなくね?」
テスター第一陣ならばレベルは高いだろうし、そういった点からギルド長に選ばれたのかもしれない。お飾りでほかに実質的なリーダーがいるのかもしれない。
「恥ずかしいのは向こうの私とこっちの私が全然違うから」
「演技してるってことなら、おかしいとは思わないけど」
「少しの演技なら……ね。
私って大人しいねとか静かだねってよく言われるんだ。そう言ってる人は悪気はないってわかってるよ。でも何度も言われると、少しは変えなくちゃいけないのかなって思って。そんなとき伯父さんがこのゲームを紹介してくれてね、ゲームの中なら本当の自分を知ってる人はいないから、そこで練習してみようって考えて実行したんだ。
演技しすぎて引っ込みがつかなくなったんだけど」
その成果は出た。体育祭の実行委員での働きぶりだ。
「実行委員であんなに動けたのはリーダー経験のおかげ?」
「たぶん。緊張してたんだけど、上手くいったみたいでよかった。
それでね、うちのギルドに入るのなら歓迎するよ。でも向こうとこっちで私のことは秘密にしてほしい。
向こうの私は思いっきり演技してて、こっちの持ちこまれると本当の自分を意識しちゃってその演技を保てなくなるんだ。アイオールになりきれなくなる。あっアイオールっていうのは私のキャラクターの名前ね。
同じ理由で、クラスメイトとかに私がアイオールだって知られると、ゲーム内で私のこと話されちゃうかもしれなくて、そこから演技が崩れるかも。クラスメイトにプレイヤーがいるかわからないし、意識過剰だってのはわかってるんだけどね」
「ようは立瀬のプライベートなことを喋らなければオーケー?」
「うん、そんな感じなのかな」
「聞かれたらどこまで喋っていい? 全部秘密にする? それともちょっとした知り合いっていうふうに差し支えないことだけ話す?」
「えっと……ちょっとした知り合いってだけなら。私年齢も少し誤魔化してるから高校生ってことも秘密にしてくれる? 出身地については以前話したことがあって、同郷はいないってわかってるから何県に住んでるくらいは話しても大丈夫」
「わかった。基本的にプライベートなことは話さないようにしとく」
「ありがとう。
じゃあうちにくるまでの道筋を言ってくね。
ビギナーズガーデンを出られるようになったらウォルタガに行ってくれる? 転送装置で移動するとヴァサリアントっていう大きな都市に出る。そこはウォルタガ世界の中心にある大都市でね、そこの南城門から転送装置でフォール小城ってとこに行ける。フォールに出たら南東に一時間歩くと泡村ってところに着く。そこが私たちブラーゼフロイントの本拠地。そこの宿屋にいけば誰かしらギルドメンバーがいるから、私から紹介されたって言えばあとはもう大丈夫」
都は話しながら道筋をメモ用紙に書いていた。それを勇に渡す。
「ブラーゼフロイントってなにか意味あったりする?」
「ドイツ語でブラーゼは泡、フロイントは友達っていう意味なんだって。『泡村に集った友』っていう意味を込めたって副ギルド長のタッグさんが言ってた」
「名付け親はその人か」
「落ち着いてるから私みたいに年を誤魔化してないんじゃないかな。頼りになる人だよ。
移動するとき転送装置使うのに500sかかるから、泡村まできたらその分は出すよ」
思い出したかのように付け加える。
「装備整えるの止めといたほうがいいのか?」
「レベル六まで上げたら、防具そろえるくらいの余裕は出ると思うよ」
自分の経験や聞いた話を思い出し答えた。
「あ! あと頼みごとしていい?」
「できることならいいけど?」
始めたばかりの駆け出しに無茶は言わないだろうと頷く。
「難しいことじゃないから。マリモを倒したら苔の塊手に入るでしょ? それを五個くらい持ってきてほしいの。
マリモじゃわからないか、浮かび苔っていう村近くにでる敵のことね」
「それくらいなら。でもなんで?」
「あれって薬の材料になるんだよ。でもビギナーズガーデン以外だと入手が難しくて、うちの薬作り職人が苦労してるの見てどうにかしたいなって思って」
「ビギナーズガーデンだと入手簡単なのに」
「私もそう思うよ。なにも考えずに売ってたあの頃のことを悔やむ人は多いはず。値段もすごく違うし。そっちだと売値20sだったでしょ? こっちだと最低でも1000sで売れるんだよ」
「五十倍!?」
「それだけ入手が難しいの。取れる場所もウォルタガにはないから、アスダーンまで遠出しないといけないし、行ったら行ったで敵は強いし」
「忘れずに持ってくようにする」
「ありがとう。あの子も喜ぶと思う。
もうこんな時間だね。出ようか?」
そろそろ六時だ。門限とかあるのだろう。
十五%引きだった会計を済ませ、喫茶店を出る。
「岸川君はどっち?」
「俺は鈴橋公園のほう」
「じゃあ私とは反対だね。バイバイってその前に岸川君のキャラクターの名前なんて言うの?」
「ヴィオって名前、濃紺の髪と目の人間。今の俺よりも少し背が高い」
「わかった。ギルドメンバーに特徴伝えておくね」
今度こそバイバイと手を振って都は歩いていく。
建物からは遊び終えた人が出てきて、今から遊ぶだろう人が入っていく。
楽しかったと満足感を得て、勇は家へと足をむけた。
次の日、ログインしたヴィオは中断した宿で目を覚ました。
空は昨日と同じく暗い。暗くても開いている雑貨屋で革鎧を購入し、その場で着込む。着慣れていないせいで少し違和感を感じるが、気になるほどではない。
村入り口で、盾と石剣を取り出し装備する。準備万端と外に踏み出す。
そして思った。
「暗い」
夜なのだから当然だ。これでは敵を発見しづらい。星明り月明かりでは心もとなかった。
松明でもつければ少しは明るくなるかと、袋から取り出す。『使いますか?』というウィンドウが開き、イエスを選ぶと勝手に火がついた。
これで周囲は明るくなり、だいぶましになった。戦闘時は柄を地面に突き刺せばいいと浮かび苔を探し始めた。
暗いことで浮かび苔の動くタイミングを見逃し幾度かダメージを食らうが、レベルアップと革鎧のおかげで1や2といったダメージで済んだ。松明が燃え尽き夜が完全に明けた頃、目標としていた苔の塊五個を超える七個を入手した勇は、一度休憩のため村に戻り喫茶店へと入った。ピザとミニサラダを頼み、ゆっくりと食べる。
食べ終えたヴィオはこれからどこに行こうか考える。
「浮かび苔はもう余裕だから、森か浜辺に行きたいけどどっちにするかなぁ」
距離的にはどちらも同じ。どんな敵がいるかわからないことが問題だ。
わからないことは聞いてみるのが一番と近くにいたプレイヤーに話しかけ情報を得る。
浜辺には秋田犬より少し小さな蟹がいる。槌や斧といった叩き潰すことのできる武器が有効らしい。攻撃方法は二種類。ハサミでの攻撃と泡で視界を防ぐ。
森には猿くらいの大きさの鳥がいる。特に有効な武器はない。素早い動きが特徴的で、爪とクチバシで攻撃してくる。
お礼を言って、喫茶店を出る。どちらに行くかは決まっていた。浜辺だ。有効な武器がなかろうと浜辺に行く。なぜなら森には鳥がいるから。
勇は鳥が苦手だった。碌な思い出がない。ちょっとしたトラウマになるほどに。ゲーム内だからといって平気だとは思えなかった。
村を出て、森と浜辺に別れた道を浜辺へと歩き、十分ほどで到着した。
視界内に二匹の赤い蟹がいる。ヴィオは早速近づく。蟹もヴィオに気づいたようで近づいてくるが、その動きは浮かび苔よりも遅い。
「これなら大丈夫か」
石剣を振り下ろす。浮かび苔のようにざっくり斬れるようなことはなく、鈍い衝撃が剣越しに伝わってくる。防御力が浮かび苔よりも高いのだろう。
次は蟹の攻撃だ。ハサミをなぎ払ってくる。それを後ろに下がり避ける。
これなら楽勝だと近づいて剣を振るった。
そして次の蟹の攻撃で油断していたと思い知らされる。今度はハサミではなく、泡を飛ばしてきたのだ。勢いがよく避けることができなかった。顔にかかった泡はヴィオの視界を防ぐ。なにも見えないず、剣を振るっても蟹には当たらない。そしてどこにいるかもわからない蟹の攻撃がヴィオに命中した。こんな状態でも体力バーはわかる。80あった体力が67に減った。
まだ泡はとれない。ヴィオの攻撃は外れ、蟹の攻撃は当たる。今度は10のダメージを受けた。ようやく泡がとれる。倒れろっと剣を振るうも蟹はまだ生きている。突き出してきたハサミを横に移動し避け、剣を振るうとようやく倒れた。
蟹は消え、赤甲羅が残る。
「始めに楽勝って思ったのが嘘みたいな展開だったな」
その場に座り込み言った。甲羅を回収し、今の戦闘を思い出す。
「注意するのは泡だな」
泡さえ喰らわなければダメージを受けることもなかったのだ。次はそこに注意すると決めて立ち上がる。
次の一戦でも泡を避けることができずにダメージを受けることになった。しかもクリティカルを受けて、戦闘が終わり体力は残り18。普段は緑の体力バーは真っ赤になっている。
「ポーション一つアウト」
袋からポーションを取り出しいっき飲み。体力は42まで回復する。念のためもう一本飲んでおく。これで66まで回復した。
「泡だなぁ。どうするか」
誰かいないかと周囲を見渡すと別々戦っている人が二人。片方は戦いなれているのか、泡を巧みに避けて斧を振り下ろしている。もう一人は、
「あ、喰らった」
泡を喰らっていた。だがヴィオと違うのは、そのまま戦闘を続行せず一度離れて泡がとれてから戦闘を再開しているところだ。
蟹と戦ってきた先人が生み出し、受け継がれてきた戦い方だ。多くの者にとって、この泡を避けるのは難しかったがゆえに生まれた戦い方だ。ヴィオの視界の中で今も避けている彼は優れた洞察力観察力を持っているのだろう。
「なるほど、泡が取れるまで離れればいいのか」
蟹の動作を見抜けないヴィオが取るべき行動は決まっていた。
一度引くという戦い方を真似て蟹を倒していく。一度、場所を考えずに戦ったせいで砂に埋まっている大きな岩にぶつかる失敗をするも、戦いと休憩を交互に行い残り時間を一時間を切った頃にはレベルが六まで上がっていた。レベル五でスキルポイントが手に入り三ポイント貯まったことになる。
自動回復のスキルアーツを取得したので、休憩しているときに体力がほんの少しずつ回復する。しかし休憩は回復だけではなく、緊張感などの精神的疲労を癒すのにも必要だった。
きりがいいので今日はここまでとして村に戻る。
甲羅をすべて売ると480sになる。手持ちとあわせて約600s。転送装置にかかる費用に余裕があるので、硬い甲羅を叩いて100から25まで耐久度の減った石剣を修理してもらった。これで残りは570s。
残り時間はあと四十分弱。スキルを一つとってみたいと思っていたので、残り時間をそのためにあてる。
「なにがいいかなっと」
スキルウィンドウを開いて、取ることのできるスキルを見ていく。刃物や格闘や魔法などが並び、本で得たものだけで十以上のスキルがある。珍しいもので農業といった文字もある。
始めから持っていた三つのスキルはすでに熟練度100近くになっていた。中でも運動は100に達している。運動スキルが100に達したとき自動回復のスキルアーツを取得したのだ。回復速度は十五秒で1%だ。
「もう上限に達したのか早いな」
早いのは当然だ。100でようやく一人前とみなされるのだから。200で熟練、300で一流だ。三つのスキルは誰もが持つ基本スキルで、しかもずっと使っていたので成長は早い。
「ファンタジーって言ったら剣と魔法。魔法使いたいな。魔法取るか」
ウィンドウの魔法の項目に触れる。そこからさらに四つ分岐がでてきた。攻撃、回復、補助、特殊の四つだ。
ヴィオはここでさらに迷う。特殊をのぞき、どれも役立ちそうだからだ。とりあえず特殊がどんな魔法なのかわからないのでヘルプで確認する。
『攻撃、回復、補助以外の魔法。例としては転移、変身、変化など』
「転移以外使いどころがいまいちわからない。
……補助って属性攻撃できそう、補助にしようかね」
補助を選び、決定した。スキルウィンドウに新たに補助魔法という文字が白く浮かぶ。
『スキルアーツ・速度増加習得』というウィンドウが現れ消えた。確認すると『戦闘中の攻撃速度上昇』と書かれていた。消費技力は30。今のヴィオでは二回が限度だ。
「多く攻撃できるってことでいいんだよな?
使い方は音声認識だったはず。速度増加」
なんの反応もない。
「あれ? なんでだろ? もしかして……スキルアーツ・速度増加」
思いついたことを実行。今度は効果がでた。言葉が足りないだけだったようだ。風が体全体に巻きついたような感じがして、そのまま渦巻いている感じがする。その状態は三十秒続きなくなった。
「戦闘中に使わないといまいち使い勝手わからない」
今度忘れずに使ってみようと考え、宿で中断した。




