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作戦始動までもう少し


 レヤアが驚愕の情報を発して、一時間経っている。あのあと会議は解散となった。レヤアは詳しい情報を求めるプレイヤーたちに、今はまだ準備段階なのでと情報公開を断った。準備が整えば必ず情報は公開すると約束したので、今日のところはプレイヤーたちは引き下がった。そんな彼らにレヤアは今日話したことは誰にも話さず胸に閉まっておいてほしいと訴えた。ゲーム総統括AIに知られないようにするためだ。もちろんずっと黙ったままというのは、無理なのではないかとレヤアたち管理者も予想ついている。人の口に戸はたてられない、うっかりと口を滑らせることがあるだろう。できるだけでいいのだ。黙った期間が長ければ長いほど、ゲーム総統括AIの邪魔が入ることはないのだから。

 邪魔のことを考えているならばなぜ話したのか、黙ったまま準備を整えていけば万全に近い状態で本番に挑める。そんな考えもあるかもしれない。それでも管理者は知らせることを望んだ。それは作戦をスムーズに進めるため。作戦決行三日前には全員に作戦を伝えることとなっている。そのときにギルドのリーダーを含め全員にいきなり情報を与えた場合、動揺や混乱が起きるのではと考えたのだ。そんな状態で作戦を問題なく決行できるかというと、不安が残る。だから先にリーダーたちに知らせ、リーダーが動揺しないように手を打っておく。リーダーが落ち着いていれば、周囲の人間の動揺もすぐに治まるだろうと考えているのだ。


 今会議室にはレヤアとブラーゼフロイント、レヤアが残るように言った人物のみがいる。

 レヤアが残るように言ったのは有力ギルドのリーダーたちだ。その中にはラスツイスも含まれていた。

「皆さんに残ってもらったのは、帰還方法の詳しい情報をお伝えするためです」

「一つ質問いいか?」

 手を上げたのは三十過ぎの騎士風の男。ゲーム内で最大人数を抱えるギルドのリーダーだ。

「どうぞ」

「俺たち大きなギルドの代表を集めたのもわからないんだが、どうしてブラーゼフロイントのメンバーは全員いるのかということだ」

「彼らは最初から関わってますので、話を聞く権利があると判断しました。

 あなたがた大きなギルドの代表を集めたのは、これから行うことに確実に協力してもらうためです。帰還するためには最低限あなたがたの協力が必要ですから」

「なるほどと言いたいが、話を聞かないことにはなにがなんだかわからないな。

 話を中断させて悪かった、続けてくれ」

 レヤアは頷いて、話し始める。

 話したのは主に作戦に関することだ。AIたちのことについてはゲーム総統括AIの行いで現状となっていることくらいで、アヤネについてはぼかした。作戦達成にはアヤネが重要な鍵なのだ。ここで話したことが原因で、アヤネがプレイヤーから被害を受けるようなことにはしたくないのだ。

「ようするに俺たちの仕事はボスとの戦いを長引かせることか」

「ええ、できるだけ長引かせることができれば、それだけこちらとしても作業が楽になります」

「プレイヤーたちを一まとめにして動かす、言葉にすれば簡単だが実際に行うのは楽なことではないな」

 人をまとめる経験の豊富なリーダーたちは、管理者の言う人数の統率が難しいことだとすぐに思い至る。

「こちらとしてもそのことは予想がついています。ですので一人適任者を推薦させてもらってもよろしいでしょうか?」

「そんな奴いるのか?」

 レヤアの視線がラスツイスに向く。その視線につられ皆の視線もラスツイスに集まった。

「私!?」

 推薦されたラスツイスは、視線に押されるように一歩引きながら驚く。

 ラスツイスの指示で動いたことのあるヴィオとタッグは納得したように頷いている。

「理由を聞かせてもらおう」

「一番の理由は、一度大勢を動かすということを経験してるからです。言わなくてもわかるでしょうが、プレイヤーキラー討伐戦ですね。あのときと今回では規模が違いますが、あのときの経験を生かすことで采配可能でしょう。一度も経験のない人よりは、慣れという部分で失敗確率が下がるとみています。

 夏休み以前でもギルド員を上手く動かすことはできていましたしね。

 もちろん彼女一人に全てを動かすことは不可能ですから、あなたがた有力ギルドのリーダーにも補佐をお願いします」

「なるほどな」

 もとより反対する気はなかったのだろう、一つ頷いて納得した表情を見せた。補佐の件も了承したとみていいだろう。

 ほかのリーダーたちも納得した表情を見せている。一人二人別のことを考えているようだが、誰もそのことに気を払うことはなかった。

「私の返事抜きにして話が進んでない?」

 話題の中心は自分のはずだとラスツイスが首を傾げていた。

 あまり乗り気ではないラスツイスだが、周囲が納得している以上ごねたところでどうにもならない。それはラスツイスもわかっていたようで、一応自身の意見を述べるだけに留まっておいた。そして総司令にはなりたくないな~、という軽めの反対意見は却下された。

 ラスツイスは帰還するためしなければならないことなのだと、自身を説得し受け入れた。その後は気持ちを切り替えて、レヤアの話を聞いていく。

 レヤアは管理者側の行動を話していく。管理者からプレイヤー側に行うサポートは本拠地設営とアイテムの補給と通信と転送のみ。指揮と戦いには手を出さないことを告げる。

「アイテムの補給は必要なものを言ってもらえれば既製品は渡せます。ただしプレイヤーが作るような特製品は無理です。通信は現場の状況を逐一ラスツイスさんたち司令部に届けますし、司令部の命令を現場に届けます。転送はグランドセオそばの草原に本拠地をおきますから、そこから各ダンジョン入り口へと移動となります。

 あとこちらからしようと思っていることは、レックスさんへのステータスアップアイテムの大量作成依頼と砕さんへの虹龍討伐以来ですね。

 それらをふまえて計画を立ててください。出来上がった計画は一度私たちへと提出してもらいます。この部屋にキーボードとメモウィンドウを用意してありますので、そちらに計画を書き込んでください」

 レックスは料理スキルの天然資質持ち、ドンドコ亭の主だ。彼が丹精込めて作った料理は長時間の大幅ステータスアップが可能だ。そんな彼に、プレイヤーたちがピンチに陥ったとき、それを乗り越えることができるようにと、料理の依頼をするのだ。大量に頼むので手の込んだものは無理だろうが、わずかなステータスアップが生死をわけることがあるのだと管理者たちも知っている。それゆえに大量注文をしようと話し合いで決められていた。

 砕はプレイヤーの中で最強と呼べる存在だ。虹龍との対決には彼が最適だと管理者は考え、依頼することにしたのだ。ゲームに閉じ込められる前から頭抜けた実力を持っていたが、閉じ込められてから研鑽する時間が増え、その実力はさらに増していた。

 砕がプレイヤー側最強ならば、虹龍はエネミー側で最強だ。その実力はなんの対処もしていないレベル80の戦闘職を一撃で倒すことが可能だ。虹龍と戦うには、ほかのボスと違い量よりも質が重要になる。データ上、対龍に特化したレベル80のきちんと役割分担された四人パーティーが勝率60%を誇っている。ほかのボスが量で圧倒できることがあるのに対し、虹龍には最初の攻撃で実力不足のプレイヤーはふるい落とされるのだ。

 この初撃は『虹の洗礼』とプレイヤーたちの間で呼ばれている。どのような攻撃かというと広範囲へのブレスだ。属性は定まっておらず、対処が難しい。ヴィオも一度死にツアーと称し、虹龍と戦ったことがある。当時のヴィオはレベルが20にも届いておらず、当然一撃で殺された。一緒にいたアイオールやタッグたちも同様に一撃死だ。

 このように生半可な実力を持つ者を連れて行っても無駄、邪魔でしかないのだ。

 砕ならば戦いの舞台に立つことが可能なのか? これはギルドリーダーたちも疑問に思ったようでレヤアに聞く。

「砕さんのレベルは全プレイヤーの中で唯一100を超えています。現在は117。彼ならば戦うことは可能ですし、もしかすると倒す可能性すらあります」

 ほかのプレイヤーはレベル90にすら届いていない。砕の次はレベル84と20以上の差が開いている。

 ただひたすらに強さを求めた砕だからこそたどり着いた強さだろう。

「それだけ強ければ依頼しようと思うのも当然か。しかし依頼を受けてもらえるのか?」

「報酬も用意してありますし、可能性は高いと」

「砕って報酬で動くような奴じゃないだろ」

「ええ、知っています。だから報酬はお金やアイテムではありません。情報です」

「聞いても?」

 駄目元で問う。よほど貴重なものなのだろうと皆考えていたので、レヤアが頷いたことに驚く。

「ええ、かまいませんよ。

 彼は強い存在を求めています。今は虹龍が一番ですが、それ以上がいると教えるとそれが報酬になりえると私たちは考えました」

「なるかもしれんが、虹龍以上がいるのか? もしかして次のアップデートで配置される予定だったとか?」

「いえ、ずっといました。ただ条件を満たせる者がいなかっただけですね。

 名前は『本気の虹龍』といいます」

「本気の虹龍? あれで本気じゃなかったのか?」

 この場にいる者は全員、虹龍と戦ったことがあり、その強さを身にしみて理解している。全員がレヤアの言葉に驚いていた。

「ええ、設定上今の虹龍は実力の半分も出していませんよ。一度虹龍に勝てば、認められ全力を出すという設定になっています」

「なんでそんな設定」

 半ば呆れたような誰かの言葉に、レヤアはドラゴンに対しての思いを述べる。

「ドラゴンって最高峰の強さを誇る、そんなイメージがありませんか? 私たち開発者はそんなイメージを持っていました。だからとてつもなく強く設定しました。けれでも無敵ではありません。神話にあるように倒されることもあるのだと知っています。だから努力か運で倒せるように設定されています。運任せの場合は幾度もの幸運が必要になりますが」

「鍛えていけば俺たちもいつかは倒せるようになるのか……実現はいつになることやら」

「まあ虹龍のことは砕さんに任せておけばいいかと。断られても手出ししなければいいだけの話です」

 ほかに質問はあるかとレヤアは周囲を見渡し問う。

 誰も質問はないようで口を開くことはない。

「では私は仕事に戻ります。ここはいつでも開放していますから、自由に使ってください」

 そう言ってレヤアは一礼し会議室を出て行った。


 残ったプレイヤーたちは早速計画を立て始める。ブラーゼフロイントメンバーはアイオールとタッグを除いて部屋を出て行った。今は必要ないと判断されたので、解散していいとラスツイスから言われたのだ。

 作戦の中心人物でもあるアヤネも一緒に出て行っている。これはレヤアがアヤネのことを言わなかったので、ラスツイスたちは重要人物と気づかなかったためだ。アイオールとタッグは知っているが、当日はプレイヤー側として動かないことも知っているので参加を促す必要もないと判断したのだった。

 話し合いはまずダンジョンボスの確認から始まった。

 プレイヤーが相手することになるボスは合計九体だ。上級ダンジョンである逆さ塔にいる公爵位ヴァンパイア。中級であるダンジョン亡霊王国にいる亡霊将軍、喰の森にいるヴァルガーフラワー、奇岩山にいる悪食トロル。下級ダンジョンであるガバレン火山にいる耐熱ウツボ、地下水洞にいるミノタウロス、アンニャララ高原にいるバジリスク、蟹爪塔にいるナーガクイーン、そしてヴィオも一度行ったコルオルジオ氷窟にいる氷狐ヒオ。

 ゴブリンキングは常に移動しているため対象とするには難しく、虹龍はすでに相手が決まっているので対象外だ。

 対象となるボスたちに対して、目的にそった力量のプレイヤーをあてる必要がある。長引かせるために高レベルプレイヤーを当てるわけにはいかない。各ボスとの戦闘経験を話し合い、互角に戦えるレベルを割り出していく。

 ボスと戦えない高レベルプレイヤーは暇になるのかというとそうでもない。彼らには彼らの仕事がある。それはダンジョン内の雑魚エネミー掃除だ。ボスと戦うプレイヤーがたどり着く前に力尽きるなんてことになっては作戦を立てた意味がなくなってしまう。体力技力アイテム消費を抑えるためにも、雑魚エネミーの駆除はやっておかなければならないことだ。

 あとはボスと戦っているプレイヤーのフォローも予定された仕事の一つだ。ここでいくら綿密に話し合ってもアクシデントはある。そのアクシデントでプレイヤーが全滅の危機に陥る可能性もある。そのときに高レベルプレイヤーが割って入り、共に戦い、場合によっては逃がすことになっている。

 ついでにレコンキスタ対策にも関わってくる。管理者から得た情報によると、予定していたレコンキスタの配置はダンジョン内にのみ出現というものだ。上中下級に関係なくあらゆるダンジョンに現れることになっている。作戦中にも現れないともかぎらないので、出た場合は高レベルプレイヤーをぶつけ対処する。

 集めたプレイヤーを全てダンジョンに投入するわけにもいかない。いつでもフォローに回せるように予備兵力として待機させておく必要がある。そういったプレイヤーたちの運用も話し合われる。

 この予備兵力はグランドセオ防衛の任務も負っていた。泡村のようにレコンキスタが突如せめてこないともかぎらない。

 各ギルドに所属する生産職プレイヤーにもそれとなく、質のいいアイテム作成を依頼するようにもなった。これよってヴィオも作戦決行時まで暇なまま過ごすわけにはいかなくなった。

 どうしてかというとヴィオが持っているスキルに関連する。会議が開かれるまでの時間で、ヴィオの会話スキルレベルが天才素質の限界300を超し400に到達した。このことでヴィオの会話スキルの素質が天然だったことが判明した。

 スキルレベル300を超えたときに動植物の声が聞こえるようになり、400を超えたときは鉱石などの無生物の声も聞こえるようになったのだ。意識すれば全ての声を聞けるようになった。

 声を聞けるヴィオが反応を確かめながら、生産者に助言すると出来上がったアイテムの質が上がる。セバスターの薬作りに協力したことで判明したことだ。

 このことがアイオールから各ギルドリーダーへと伝えられ、ヴィオは有力生産者プレイヤーの元へ出かけなければならなくなった。リーダーたちがグランドセオへと生産者プレイヤーを呼び寄せたので、各世界を渡り歩くなんてことはしなくてよかったが、忙しく歩き回るはめになったのはかわらなかった。

 帰還のため、当日不参加の代わりということで、ヴィオはこの役割を受け入れたのだった。


 こういった話し合いが五日間に渡り行われた。必要アイテム、各ダンジョンへの投入人数、予想される必要準備期間など綿密に書かれた計画書をレヤアに渡し、判断を待つこと二日。承諾の返答を持ったレヤアが計画の開始を宣言する。

 次の日、臨時会議が開かれ集まったギルドのリーダーたちに詳細が知らされる。本拠地に戻った彼らは作戦決行の三日前に帰還できることをメンバーたちに知らせ、当日の作戦参加を促す。

 管理者は事前に決めていたこと、プレイヤー側の要求を満たすため本格的な行動を開始する。

 プレイヤーは司令部を中心に動き出す。

 すべての準備が整い、帰還作戦が開始されるのは12月25日クリスマスとなった。作戦達成の願掛けにはちょうどいいと、スケジュールを確認した管理者もプレイヤーも笑いあう。

 

 話し合いから戻ってきたタッグとアイオールが夕食を済ませたことを確認し、ヴィオは二人に話しかける。

 作戦決行当日、アヤネについてくことを話しておこうと思ったのだ。連絡もなしに姿を消すと死んだと思われ、心配をかけることになるかもしれないのだから。

 紅茶を飲み、一息ついたところでアイオールは口を開く。

「それで話ってなんだい?」

「作戦の日に俺はアヤネについていくんだ。それを伝えておこうって思って」

「ついていくってゲーム総統括AIのとこにか? できるのかそんなこと」

「アヤネが言うには可能だってさ。

 だから当日いなくても心配しなくていいよ」

「……それはヴィオが行かなくちゃいけないことなのかい?」

 心配と不満の色をわずかに目を浮かばせてアイオールが聞く。

「んー……正直なところ絶対行かなくちゃいけないことはないんだと思う。

 でも残っててもたいして役には立たないからね、それならこうなった事情が知れるっぽい方に行ってみたい。

 それにもしかするとなにかの役に立てるかも。その可能性はすごく低いだろうけどね」

「俺は行ってもいいと思うな。ヴィオ一人が抜けたところで作戦には影響はないだろうし。

 ヴィオが言っているように、なんらかの役に立つ可能性もありえる。アヤネの嬢ちゃんも一人で行くよりは心強いだろ」

「たしかに一人よりも二人ってのはわかる。でも……んー」

 アイオールは自分でも理解できない思いに頭を悩ませている。タッグの言うことは理解し、納得もできている。けれど心に浮かんだなにかが素直に頷くことを邪魔している。

 難しい顔で悩むアイオールをタッグは面白そうに見ている。悩みに見当がついているようだ。

「青春だなぁ」

 タッグの口から思わず漏れ出た感想にヴィオが反応する。

「なに言ってるん?」

「若いっていいなってことだよ。俺もいろいろと苦悩したもんだ。

 嬢ちゃん、思いっきり悩め悩め」

 タッグは楽しくて仕方がないといった顔で、アイオールの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「なにするんだいっ」

「すまんすまん。妹がいればこんな会話ができたのかねぇ」

「もしかしてタッグはアイオールがなんで悩んでるのかわかってる?」

「100%ってわけじゃないだろうが、それに近い答えは持っていると思うぞ」

「それ教えてあげたら?」

「自分で気づいたほうがいいと思うがな。自然な感情だから忌避するようなものでもないし。いきすぎは問題になるが」

 タッグのヒントを聞いても、いまだアイオールは頭を悩ませている。

 アイオールが感じているものは嫉妬だ。ヴィオとアヤネが一緒にいることで独占欲を刺激されている。

 アイオール、いやこの場合は立瀬都といったほうがいいか。彼女にも恋の一つや二つは経験がある。けれども積極的ではない性格が災いして、遠くから見て諦めるといったものになっている。だから好きな相手が自分以外の誰かと一緒にいる場面を見て、嫉妬したことはない。

 都が勇に恋をしている、と断言はできない。しかし好意を持ち、気になっているのはたしか。明確な気持ちを持っていないことも悩む原因なのだろう。慣れない感情に、原因がわからず思い悩むことになっている。いっそことはっきりと恋しているといえる状態ならば、自身の気持ちに予測がついたはずだ。

「とはいってもずっとこのままだと作戦決行日にも影響でるかもな。

 俺から言えることは、今のところは思い過ごしだろうから気にしなくていい、ってところだな」

 ヴィオの様子を見るかぎり、アヤネに惚れている感じではない。だから嫉妬してもあまり意味はなく、疲れるだけだ。

 とりあえず先送りでいいと言うタッグに、そうなのかとアヤネは考えることを一時中断する。たしかにこのままでは気が散って、作戦の準備と実行にも影響が出てくる。

 この先二人いやアヤネも含め三人はどういった関係を築いていくのか、それを考えるとタッグは楽しみが一つ増えたような気持ちになる。傍観者の立場でいれば、恋愛事はこれ以上ない娯楽なのだ。よりよい結果を知るためにも作戦は成功させなくては、とタッグは人知れず気合を入れたのだった。

 

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