報酬を貰ってお土産買って宴会する話
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部隊長に助けて貰い、命からがら町まで戻ってきた。
日は暮れていい感じの時間となっている。
「着いたぞ。ここら辺でいいか?歩けるか?」
「ええ、何とか。隊長が来なかったら終わってました。ありがとうございます。」
「お前のお陰で作戦も順調で、助けられた者も沢山いるし、みんな心配していた。我が隊の英雄様だよ。報酬は期待しておけよ。じゃあな。」
隊長に手を振って、帰路に着く。
今日は疲れた。
もう、寝よう。
それから泥のように眠るのであった。
起きると日は登っており、午の時刻あたりだった。
あぁ、もうこんな時間か。
やることやらないとな。
まず、飯を食おう。
ということで行きつけの定食屋に行った。
「いらっしゃませー。て、あれ?天貴君じゃない!最近来ないと思ったら、何だか立派になっちゃって。どうしてたのよ?」
「ご無沙汰しております。お姉さん。昨日までの戦に向けて鍛錬しておりました。とりあえず、焼き魚定食をお願いします。大盛で。」
本当は奥さんなんだけど、そう言うと機嫌が悪くなるので、お姉さんと呼んでいる。
「あのガリガリ坊やが大盛を食べるようになるなんて、そりゃあ国も戦に勝つわけよ。ちょっと待っててね。」
まぁ、確かにガリガリだったな。
今でも細いけど。
「お待たせ致しました。焼き魚定食です。」
飯が来たので、早速頂く。
「頂きます。」
腹が減っていたので、涎が出てきた。
う、美味い・・・
昨日の夜なんか疲れすぎて飯どころじゃなかったし、一昨日の夜のみんなで食べたご飯はともかく朝も昼も温かいもの食べてないんだよなぁ…。
温かいご飯が食べれることと健康な身体に感謝しよう。
「ご馳走様でした。お姉さん、また来ますね。」
「いつでもいらっしゃいよ。」
さて、次は兵務署に行こう。
兵務署に行くといつものお姉さんがいた。
「こんにちは、登録番号◯七三八天の貴です。戦の後処理で参りました。」
今回も前回と同じく登録番号を貰っていた。
「先日はお疲れ様でした。大変ご活躍されたと伺っております。覚えていらしたら、討伐者数を教えて頂けますでしょうか。」
八六と答えた。疑われないかな?
「八六!?この一ヶ月でかなり鍛えられたのですね!貴方の部隊の隊長さんから少なく見積もることはあっても多く申告することは無いと聞いていますが、これ程とは思いませんでした…。少し経理処理に時間が掛かりますので、呼ばれるまでお待ち下さい。あと、今回の活躍により十人長となります。特別手当もありますよ。おめでとうございます。」
ほぇー。よくわからないけど凄いことになっているんだなぁ。
沢山お金を貰えるといいな。
次の戦があるかわからないけど、十人長かぁ。隊長は百人長だったかな?
そんなことを考えていると、名前が呼ばれた。
「天貴さん、お待たせ致しました。」
さてさて、いくら貰えのかな?
「報酬ですが、事後報酬が七◯万円。特別功労手当が二五万円。貢献度手当が二五万円。勝戦手当が一◯万円。十人長への昇格手当が三◯万円。討伐者手当がいつもより倍額の一人当たり一万円となりますので、八六万円。合計二四六万円になります。金額が多いので気を付けてお帰り下さいね。次からは手渡ではなく、銀行に振り込みをお勧めします。」
え…こんなに多いの?
何この札束、見たことないんだけど。
「どうか致しましたか?後ろがつかえておりますので、お受け取り下さい。」
「え、あ、はい。すみません。」
こんな大金を持つのは生まれて初めてだったので、手が震えている。
とりあえず、落としたり無くしたりしないように気を付けてよう。
最後に師匠の所に向かわないと。
せっかくだからお土産を買って行こう。
師匠には高い酒でいいかな。
弥生さんにはそうだな、高い化粧品にしよう。
酒屋は酒屋でも高級酒を扱う公家御用達のお店に行った。
国産の酒や焼酎だけではなく、輸入の葡萄酒や麦酒が綺麗に並べられている。
一五歳で成人しているけど、自分で酒を買ったことないんだよね。
無職同然で大した収入もなければ買う機会がないからわからん。
やはり、聞くのが早い。
「すみません。国産で辛口の酒を探しているのですが、お勧めはありませんか?お世話になっている人に贈りたいのです。」
「辛口で贈答品となると、ここらへんでしょうか。後はこちらですかね。酒を飲む者なら一度は飲んでみたい名酒『霞月』をたまたま仕入れることができました。」
一番安いものから順に三万、五万、一◯万と霞月が五◯万円と説明を受けた。
うわぁ…高いなぁ。
こんな酒を普段から飲んでいる人いるんだなぁ。
俺にもお金回してくれよ。
「じゃあ、霞月でお願いします。現金で。」
「五◯万円になりますが、宜しいでしょうか?」
なんか疑われてるよ。貧乏人だか良くても庶民がからかっているとか思われているのかな?
「ええ、お願いします。丁度あります。」
と、ここで五◯万円を出す。
「…はい、確かに確認致しました。この商品には今回限定で酒蔵よりこちらのお猪口と徳利を付けるようにと念を押されております。お気を付けてお持ち下さい。」
高級酒な上に徳利とお猪口も付くなんて何か得した気分だな。
よし、次は化粧品店に行こう。
※
天貴が店を出ると、店主があることに気がつく。
「何かおかしいと思ったら、霞月の値札を付け間違えているじゃないか!限定版だから一◯◯万円で販売予定だったんだよな…いつもの値段にしてしまった上に純金製の徳利とお猪口も付けちまった…」
※
次に高級そうな化粧品店に足を運んだ。
来てみたものの、何がいいのかさっぱり分からない。
わからないことは聞くに限る。
「すみません、四◯から五◯代くらいの女性に贈り物をしたいのですが、何が良いかわからなくて困っております。お勧めはありますか?」
「いらっしゃいませ。それでしたら、こちらの『不老樹の枝葉』は如何でしょうか。葉を煎じて飲んでも肌につけても若返りの効果があると言われております。枝は植えると成長するとかしないとか。他の町では一◯◯万円するらしいのですが、効果が眉唾なの一本二◯万円で販売致します。在庫はここにある二本のみとなります。」
するとかしないとかって適当だな!
まぁお勧めだし、お金もあるし、いいかな。
現に店員のお姉さん美人だし、使ったりしているのだろう。
「それ下さい!」
「え…本当にいいのですか?返品や苦情を言われても対応できませんよ?」
「ん?お勧めじゃないんですか?」
「(大きな声では言えませんが、店主が仕入れたのですが、売れなくて困っておりました。いい値段のために試すこともできず、といった状況でした。」
「(それなら敢えて選んだ自分が悪いので気にしないで下さい。効果はまた報告に来ますよ。)」
「ありがとうございます。それでは一本お買い上げで宜しいですね。」
「ちなみになのですが、二本で三◯万円にできたりします?」
「んー…いいでしょう!売れるかわからないですし、枯れても勿体ないですから、二本で三◯万円でお願いします!」
「では決まりですね!こちらに現金三◯万円あります。」
「掛や小切手や分割ではなくて、現金ですか!尚更ありがたいです。お名前を伺っても?」
「神皇流道場門下の天貴と申します。あ、これ経費じゃなくて個人としての購入です。」
「ますます謎の多い方ですね。それはともかくありがとうございました。これには売れなくて困っていたので助かりましたよ。」
何か良いことした気分だなとお姉さんに手を振り、高級化粧品店を後にする。
報酬のうちいくら使ったんだっけか?
二四六万あって、お酒に五◯万円、枝に三◯万円か、あと一六六万か。まぁ十分だよね。半年は無職で過ごせちゃうな。
よし、師範の所へ行こう!
「御免ください。天貴です。無事戻って来ました。」
バタバタと足音が聞こえる。
弥生さんが走って来た。
「天貴くん!遅いから心配したのよ!もっと早くに来なさい!」
「報酬が入りましたのでお土産を選んでおりましたら、遅くなってしまいました。師範はいらっしゃいますか?」
「中でそわそわしながら待っているわよ。顔を見せて安心させてあげなさい。ずっと無事がどうか心配していたんだから。」
やべぇな…かといって手ぶらで来るわけにもいかないし、どうにもならなかったなぁ。
お土産のことは伏せておいて、雑談をしつつ、師範のいる居間に向かう。
「師範、天貴です。只今戻りました。」
「うむ。まぁ座るがよい。」
あれ?普通なんだけど?
「何が『うむ』よ。さっきまで落ち着きなかったくせに。」
「ぬ…わしにも面子があるんだが…」
師範らしくあろうとしてくれたわけか、心配してくれたことがわかっただけでも嬉しい。
「戦のことは追々お話します。その前にお土産を渡させて下さい。」
不老樹の枝葉を二本、座卓の上に置く。
「不老樹の枝葉と言いまして、葉を煎じて飲んでも塗っても若返る効果があるらしいです。枝は植えると成長するとかしないとかいう話らしいです。これは弥生さんにです。」
「まぁ!値段以上に手に入れるのが大変ということで有名なのよ!神皇流に使い方が伝わっているから喜んで使わせてもらうわね。」
とてもご機嫌だ。よかった。
次に霞月を座卓に置く。
「これは霞月という名のお酒です。お酒を嗜む人なら一度は飲んでみたい名酒のようです。師範へのお土産になります。」
「ほっほーう。酒なら何でもありがたいのだがな、霞月なんて滅多にお目に掛かれん。ここまでの物を用意してくれたとなると破顔せずにはおられぬわ!礼を言うぞ!」
師範がここまでにやけてるなんて、こっちも嬉しくて涙が出て来そうだ。
戦で頑張った甲斐があったな!
「そういえば酒蔵側で徳利とお猪口も付けて卸したようです。こちらもどうぞ。」
包装を空けてないので中身はわからないが、きっと良いものなのだろう。
「ほほう。どれどれ…。なんじゃこれは!?純金製ではないか!酒の為にここまでするのか!?これは堪らん!よし、今日は天貴の帰還祝いだ!」
純金製だったのか、知らなかった…。
丁寧に説明書も付いてきて純金製と書いてるあたりが小憎たらしい。
お猪口は三つあって、天地人の文字がそれぞれ一文字ずつ書かれている。
徳利には天地人の三文字。
何でも霞酒造が五◯周年らしく、日頃の感謝の気持ちを込めて純金製のお猪口と徳利を付けているらしい。
しかも霞月もいつも以上に技術と材料に拘った特別版らしい。
神皇流の門下となってからの初戦でかつ勝利の宴である。
今日は泊まっていけと、風呂に入ってからいつでも寝れる格好で宴が開始する。
お祝いをしようと食材を揃えてくれたらしく、いつも以上に豪華で美味しい料理での宴会だった。
普段は飲まない弥生さんも、折角だからと師範に勧められて、天地人のお猪口で盃を交わす。
霞月は予想以上に美味く、誰もが頬が緩むのを止められない。
「お土産にかなり奮発したんじゃないの?嬉しいけど負担になっていないか心配だわ。」
「値段は秘密ですが、報酬が良かったので奮発してしまいました。それでもあと半年は働かなくても生きられる分が残っているから大丈夫ですよ。」
「ガハハハハ!ぬしは見た目に依らず、金を貯めらなそうだな!早く相手を見つけるが良い!」
「この人も一人じゃ武道以外は何もできませんからね。全部真似しては駄目よ。」
自分も掃除も料理も出来ないからな…
お金の管理も正直怪しい…
飲み食いしながら、戦の話をした。
どこに配属されて、どんな風に戦ったか。
名前を忘れたが、やたら自分の名前を主張する何とかという格上の大男と戦って持ち堪えたこと。
そして戦が終わった後に『奴』が現れて、間もなく襲ってくるというところを部隊長に馬で助けられたこととか。
師範からは
稽古は明日から始めるが、軽めにする。
他に今後の方針の説明をするが、今は気にするな。
今日は思う存分飲んで食え!
とのことだ。
料理も無くなり、酒も無くなったところで、眠気が押し寄せて来た。
「しはん、やよいはん。ごひそうさまれひた。じぶんはこれにてしつれいさせせいはらきます。おやふみなはい。」
「はい、おやすみなさい。」
「うむ、ではまた明日な。」
「あなた、軍からの天貴君の報告書見た?」
「ああ、『自分の武勲に拘らず仲間や隊を優先し、強さに驕らない』本来は武人に向いた性格ではないのだろうな。だが、あれ程筋の良い者はそうそうおるまい。世も意地が悪いのう。」
「とにもかくにも優秀だったようね。『戦闘能力、貢献度も高く、所属日数が少ないながらも道場の評価に恥じない程立派な活躍をされました』他の子だったら、こうもいかないのにね。ただてさへ可愛いのに余計に可愛く思えちゃう。『戦をなくす為に戦で戦える者を育てる』という矛盾がわかった時にあの子はどうするのかしらね?」
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