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生きるロボ  作者: 木下美月
冷たいフユ
20/26

 暗く深い、水の中。

 或いは、宇宙。

 僕の心はユラユラと。

 僕の躰はフワフワと。

 漂っている。

 流されている。

 とんとんとん、

 混沌と。

 だくだくだく、

 混濁する。

 混じっていく。

 僕の意識。

 僕の思考。

 泣いてるの?

 笑ってるの?

 誰もいない。

 僕は誰?

 あなたって本当に僕なの?

 どうだろう。

 無重力の中で、

 僕は堕ちていく。

 ぐるぐるぐる、

 回っている。

 じりじりじり、

 ノイズの様な音を立て、

 ボヤけていくのはなんだろう。

 さらさらさら、

 肌を撫でる風。

 これは風?

 違う。

 僕を支えてた夢たちの、

 密度濃い集合体。

 いつからか一つずつハジけていって、

 泡の様にパチパチと、

 軈て脆くなった夢のカケラが、

 僕をここに留める力を無くした。

 だから堕ちているんだね。

 悪くないかも。

 どこかで止まるかなあ。

 永遠に落下するのかなあ。

 暗闇でよかった。

 無の象徴。

 何も、誰も、存在しない。

 僕だって。

 妙だな。

 誰かに何か、言われてた気がする。

 頭が痛い。

 頭はどこにある?

 躰は誰のもの?

 痛い。

 意思とは関係なく働く思考を、

 静止させなくては。

 どうして?

 楽だから?

 楽になりたい。

 苦しくってしょうがない。

 もう、耐えなくてもいいよね。

 すっと痛みが和らいだ。

 そうだ、最初から楽に生きればよかった。

 俺の生は不運に始まったんだ。

 あの時。

 二千三十年に生まれたあの日から。


 少しだけ、違和感を感じた。

 けど呼び起こされる記憶をなぞって行く内に、俺は漸く自分が誰かわかった。


 染井驟(そめいしゅう)それが俺の名前だ。

 確信と同時に、落ち続けていた俺の精神はピタリと止まり、暗闇が晴れたその場所に縫い付けられた。


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