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中部屋の子  作者: 本みりん
6/6

犯罪者の作り方

遅くなってごめんなさい。

長くスランプ(書きたいことが書けない)でしたが、見てくださる方も度々いるようなので短い一話だけ置いておきます。

これでもまだ書けないようだったらイラストを描いてみる等、この作品に関わる活動は続けていきたいと思っています。思い入れの強い作品なので、完結はさせたいと思っていますが、今のところめどは立っていません。

スランプの中で書いたものなので、今回の話以降は、前より読みづらく内容もつまらなくなるかもしれません

ごめんなさい。

「お願い、好きでいて」

 怯える雪の頬を叩く。やめてと懇願する口を塞ぎ、床に押し倒し、馬乗りになる。彼女の脚の上に膝を立てる。どこにも向けられない気持ちを込めて、彼女へ拳を振り上げる。そうやって彼女に暴虐を加えながら、言う。

「お願いだから、嫌いにならないで」

 じっと顔を見つめる。幸せを忘れたやつれた顔。決して逃げられないようにしながら、彼女の手を強く握りながら、そう迫る。

「好きじゃないの? ねえ、嫌いになった?」

 彼女は顔を背ける。目をそらす。それすらも許さなかった。しっかりと手で掴んで、こっちを向けさせる。彼女が、僅かに首を振った。おそらく嫌いになったわけじゃないという意味だろうけど、私はお前のことなど見ていないし好きじゃないよ、というメッセージのようにも聴こえた。

「ねえ。答えてよ。嫌いになったなら、はっきりそう言ってよ」

「やっ、違う……嫌いなんて……」

「嫌いなの? 俺のこと、教えてよ」

「だから、嫌い……とかじゃなくて」

 歯切れの悪い彼女が怖かった。いつか、彼女が自分を否定するんじゃないか。何だって肯定できるような心の優しいこの子に、とうとう拒絶されるようになってしまったら。もう自分の全てになってしまった彼女に、嫌われてしまったら。自分はそのときどうなるのかと、怖かった。自分の存在理由が、わからなくなってしまう。また失ってしまう。そして、でも実際に嫌われているのだろう。こうやって彼女に嫌われるようなことを重ねていくたびに、彼女の好意は薄れていく。そうして嫌われていく。それくらい、自分にもわかっていた。学校で一緒だった時より、身体をどれだけ近付けるようになっても、気持ちはどんどん離れていった。それが怖くて、でも何かせずにはいられなかった。彼女を独占したいという間違った衝動。きっとこの子を守りたいという大義名分の下に隠した、そっちが本音だった。

「逃げないでね」

 彼女の目がようやくこっちを見た。拳を固めて、迷いながら、お腹に叩きつけた。衝撃がある。彼女の身体にしっかりと沈む。悲鳴を上げようにも、痛くてできないらしかった。痩せこけた身体は肋骨が浮き出ているようで、硬かった。次は同じところを蹴り飛ばした。華奢な彼女は、受け止めきれずに床に倒れ込む。そこで頭を固定して、さっきと同じように頬にビンタを繰り返す。と机にあった重そうな辞書が目についたので、手にとって頭に一発だけを入れた。

 そうなるともう止まらず、泣き声と物同士がぶつかる衝撃音も止まず、ただただ無心で続けた。彼女の感情ももう関係なかった。ふと我に返ったのは、数分過ぎてからだった。その時彼女は、もう息があるか怪しいような状態だった。逃げもしなかった。やっとおとなしくなったので、手首から続く、力なく床に投げ出された手に手を重ねる。もう暴力はしないで、そっと言う。

「僕のことだけを見て」

 その呟きに、彼女は魅入られたように、糸で操られる人形のようにぎこちなく、頷いた。

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