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馴染な男  作者: 孤独
大学4年
39/52

左の凶器



野球とは、1人でやらない。9人。それ以上で戦う。

大学最強打者は、村井一樹という男。レイジ世代を代表する、超強打者。

しかし、彼の”個の強さ”は圧倒的。



「だが、ポジションはファーストのみ。ま、指名打者もあるか」



桐島勇太はレフトかライト。

鷹田花王はなんと、サード、ファースト、ライト、レフト。4つのポジションを守れる。ちなみにGG賞を獲得するぐらいの内野手として、手堅い守備をする。


単純な打力のみで生き残る事は難しい。出番を増やすには、やれることを増やす。当然なこと。

ファーストと指名打者は、まさに打の激戦区。

いくら打力があろうと、当然である結果を出さねばならん事。できませんでしたでは、いけないこと。


別に桐島と鷹田はファーストに自信がないわけではない。



『ワイ、ファーストとか嫌やねん。バント処理とか、捕球とか連携とかで毎回いなきゃならんやん。守備は苦手やないけど、嫌いなんや』



桐島はそーいった理由。

外野でサボってる方が好きだからである。

まったく暇ではないんだけどね!


『……俺はただ出番が欲しかっただけだ』



鷹田はそーいった理由。

好き嫌いもあれば、数多く出場したいという意思があるからの、難しいポジションへの挑戦。(というか、2人共外野手であったけど)

いくつもあるポジションに、強打者を据えられる。それこそが強いチームが持つ、打線という言葉になるだろう。

最強打者と、最強打線は違うということ。

つまり、今年の慶応大学が最強の打線だということだ。



「サードに八木、ショートに猪瀬、セカンドに海堂」



3人共、総合力の高さに評価が集まっている。慶応大学というチームカラーが、そーいった選手を集めては育てているという事だろう。

何でも十分にこなしてこそ、プロへの道。社会への貢献に繋がる。関心してしまう。



「3人共、左の強打者」

「そこに左の大鳥ですか……」

「大鳥がどれだけ彼等を抑えるか、そこに勝因と評価が決する」



ぶつかってくれて、ありがとうと。スカウト達は感謝する。互いの有力者達を評価しやすいことだ。




◇          ◇



猪瀬を超えられる。

そう。宗司に。梅雨が入る前に言った。

これまで見てきたチームメイトから見れば、大鳥が上を行く。名神に、確信はある。

だが、


「名神さん。半年ぶりですね」

「宇佐満ん。わざわざこっちのベンチにまで」



向こうから挨拶に来た。試合前であるから、軽くのことである。



「一緒に野球をやったり、今日は敵として戦うのも不思議だな」

「ですね。目一杯、やりますから」

「少しは手加減して、勝たせて欲しいな」


猪瀬は完成されてなお、成長している。

予感ではないのが、事実。



「ところで……!」


挨拶をしに来ただけの猪瀬であったが、一際キツイ視線を浴びた。


「和が世話になったらしいな」

「えっと……あなたが、大鳥さん。ですか」


猪瀬の方が年下であるが、ガタイは猪瀬の方が分がある。しかし、大鳥は敵意を剥き出しにする。早くも始まっている。


「悪いが、今日のお前には何も期待させん。和!甘やかすなよ!」

「これは申し訳ないです。けど、恩返しはキッチリしますよ」



バッチバチの火花が散る。戦う前だからこそ、これだけの強いライバル意識があるんだろう。

もうここではお邪魔であると察して、猪瀬も退散する。

猪瀬が去った後、キャッチボールを要求する前に大鳥は


「……和。俺は抑えるからよ」

「!」

「今日も頼むぜ」

「任せてくれよ」


ぶつかり合うには早すぎるが、ここで終わっていいわけがない。

監督も言っていたが、一回戦でぶつかったのはラッキーだったと言える。

やり取りからして、猪瀬は大鳥を知らない。侮りもある。だが、こちらは猪瀬の打撃を1か月、見て来た経験がある。




◇            ◇




「プレイボール!」


先攻は九州国際大学。後攻は慶応大学。

試合展望は大鳥に掛かっている。そうとしかない。

詰まるところ、慶応大学の優位は変わっていない。

1回表が淡泊な攻撃で終わってしまった事で、慶応大学の攻撃がハンパではない打線であると見せつけられる。

選手の総合力の高さが成せる打順。



1番、ショート、猪瀬。

2番、セカンド、海堂。

3番、サード、八木。



1~3番まで、ヒット、ホームラン、盗塁、バント、……なんでもこなせる選手が初回からやってくる。

単純な打力ではこうはならない。少なくとも、3番まで俊足と呼べる選手を並べるのは、プロ球団でもそうはない。

左の巧打者が3連続。この3人との結果は大鳥の成長が、真実かどうかを試されている。



「初回の、その一番で」



こんなに戦いたいって打者は初めてだった。



「まず、三振」



気合の入った表情で、左打席に入る猪瀬に誓う。

聞こえてなくても伝わり、分かるから。猪瀬は名神に伝える。



「なら僕は、ホームラン……だね」

「……………」



運命の始まり。

大鳥宗司と名神和。そして、猪瀬宇佐満のライバル関係はこの試合から始まった。



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