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馴染な男  作者: 孤独
大学4年
29/52

好い条件



阪東孝介のプロ野球界1日引退、及び半永久追放。

それはプロ野球界においては、革命が起こった出来事であった。

これまで高校生、中学生、小学生。


学び屋にいながら、懸命に野球を続けている者達が現在だけでなく、未来を見据えるきっかけとなり、汚く欲深い大人達の腐った目を洗った事だった。決してそれは悪ではない。時代の進みと共に変化もあり、阪東が起こした革命も変わることもあるだろう。


「大学、社会人。特に投手についてはこれまでの投球内容のチェック、酷使、故障歴を把握するように」

「本人の素行や第三者の評価もしっかりな」

「優れた才気や優れた肉体も、心と故障によっては崩れてしまう」



プロの世界は厳しくなったが、より厳選に選手を選ぶ流れとなる。

それは下部組織と言える、アマチュア野球にも浸透される。

指導者が選手の酷使、使い潰しという事態に厳重な警告。未来ある選手達にとって、成長こそが大事であり、結果を求めるための酷使は危険であることを指導。体調の管理、怪我の防止。モチの論、勝つという正しさも必要なのだ。

人生とは、誰だって、いつだってこっからである。


「いや、指導者は大変だ」

「そりゃそうだ」


難しい事ばかり。まだ完全ではないし、完全もない事だ。

時折現れる、怪物、天才。それらは今、少しの間。保護された。


「今ドラフトは”最強3世代”、米野・桐島世代が大卒で出てくるんだろ?」

「あの世代はほとんどプロ入りだからな。世代に数えられる奴が大学に行ったのって、そんなにいないだろ」

「いやいや分かっていないな。あの8人」



阪東、米野、桐島、レイ、鷹田、鷲頭、叶、井藤。



「この4年でタイトル、レギュラーを勝ち取った連中。そんな傑物と渡り合った選手はいるもんだ」

「今年の大卒は良い選手を聞いているぞ」

「村井は”レイジ世代”だぞ。あいつは来年だ。大学ナンバー1のスラッガーが、ドラフト候補に入らないくらいだからな」

「プロに行って成長を期待するよりかは、即戦力ってところだろう。完成度、高いのが多いらしい」

「調子崩しているが、総合力なら八木かな?内野守備は一軍レベル以上だ」

幸先さいさきはどうしたんだ?あの鷲頭の相方。最近、話聞かないぞ」

「あいつはまた故障だ。捕手は何かと大変だしな。だが、育成で獲る球団があると聞く。捕手の守備面なら昨年新人王の鬼島より上って話だし、鷲頭の凄さにあいつのリードが有ったからな」

「捕手と来たら、鍋島もどうだ?幸先と比べて経歴、実績は良くないが、強肩と捕球技術が優れてる」

「そーいやその世代の捕手って、大半が大学に行ったな。もう一人いたろ?あのあいつ、……井藤と組んでた」

「打者・野手は豊作だな。ほうはあの鷹田と鷲頭の元チームメイト。将来は和製大砲だろう」

「投手はボチボチかな。ほとんどプロに行ってたし。アンダースローの舘は面白いかな」

「マイナー所だが、関西リーグの世道よどうも良いな。大学最速記録を持ってる」



多くの怪物共の名が挙がる。

その中にあって、



「九州の大鳥も良いぞ。制球力抜群に加えて、奪三振能力も凄い」

「左の技巧派か。だが、あれはもう頭打ちに近いかな」

「技巧派ってプロで大成し辛いからな。躱す投球ってのは、力不足を露呈してるからな。成績が伴ってないが、世道の方が期待されてるぞ」

「隠し玉としたら有りかな」



怪物8人の下にいる怪物達と共に、名が挙がる大鳥。

あとほんの少しで辿り着く、プロの世界。



◇       ◇



大鳥は決して頑丈な選手ではない。また、成績においても全国レベルから見れば、中の下といったところ。高校では県内ベスト4が最高。大学ではこれから先を含めて、3度も全国を経験。だが、いずれも1,2回戦での敗退。

経歴と実績なども含め、プロ注目というより隠れた逸材という見方。何より、悲しい事を挙げるのなら



「今年は野手陣が良い」



今年は全体的な打高となった、大学野球。

左腕という条件で大鳥も、大学屈指の好投手というカテゴリーに入っている状態。スカウトの意識も評価も、野手の高評価が目立つ。




「大鳥くんなら5巡目以降でも残るだろう」

「狙っている球団も少ないですしね」




この当時の情報によれば、大鳥の獲得に動いていたプロ球団は2球団。

1つは左腕不足と中継ぎ不足のための補強。

もう1つは1人の投手として、大鳥を育成したいというものである。

ただし、後者は



「育成での契約ですかね」



担当スカウトが大鳥の3年時の投球を見ており、大鳥の成長がまだ続くと見ていたのだ。



「でも、最後の年だってのに調子が上がらないみたいだね。秋の全国大会の敗戦の影響かな?」

「はははは。安く獲ろうって考えかい?それがない事は事実だよ」


本人とは2球団共に面談を終えており、球団としての方針も伝えていた。

大鳥の意思は今年の成績も踏まえた上で、志望届を出すとのこと。どちらの球団でも入団を求めていた。

まだ終わってはいないが、今後の活躍によって進路はほぼ決定的という事だった。

下位ドラフト、あるいは育成契約。

スタートはとても厳しい地点からではあるが、本人にとっては夢の話が転がってきたのだ。

そんな中だが、今シーズンは不調。



「ふーぅ……」


春季リーグ、格下相手に6回2失点。結果としては悪くないが、内容がイマイチ……。

四球が多かったり、スライダーのキレと抜群の制球力で三振を奪う力が弱くなった。

調子の悪さが出ていると思えるが、それらが起きている理由が、



「はぁー……和、……」



名神和の不在であった。

彼もまた、大鳥と同じ誘いを受け。武者修行に行っていた。



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