猛者共だ
今年の秋の明治神宮大会。
「去年はベンチ外だったから、初めてだな」
「ここには来てただろ?」
大鳥と名神。九州国際大学も代表として、選ばれる。ここに来て、チームの全盛期かもしれない状態である。
ここに来てこそ、全国の猛者と呼ばれることだろう。
そんな大鳥と名神達を他所に、プレッシャーを感じる先輩達がいた。
「やべぇな、今年の全国は……」
「ああ、どいつもこいつも。”最強3世代”の連中がうようよいやがる」
「うへぇ~、コールド負けで終わって欲しい」
雑誌やらでも見た事あったり、直接ぶつかった事もある。
彼等にとってはトラウマを抉られるようなものだ。中でも一際オーラが違うのが、この男。
「村井だ!村井一樹!!安打製造機!!まだ2年なんだろ!?」
「リーグで打率8割越え!!なんなんだよ、あいつ!?プロ行け、馬鹿野郎!!」
村井一樹、”真打”
2年生。大学ナンバー1、スラッガー。ポジション、ファースト。右投右打。
モブの声で出たように、大会打率8割越えの怪物。とにかく、ヒットを打つ。天才とされるほど、とんでもねぇ打力を持っている。高校時代から打撃でプロに通じるどころか、蹂躙するほどと評された男。まだこいつは2年でありながら、すでにドラフト候補に入っている選手だ。
この世代では、代表格のレイジを除けば、トップレベルの逸材である。
「幸先も怪我が治ったのか!?」
「うわぁ。出てきて欲しくなかったのに……」
幸先高次、”芸者”
3年生。大学ナンバー1、捕手。ポジション、キャッチャー。右投右打。
関西リーグ、出塁率5割越え。打撃はもちろん、特に守備面。計5人の投手をリードし、盗塁阻止率100%。肩の強さ、送球の正確性、巧なリードとリーダーシップを持ち合わせ。大学ナンバー1選手と評価されてもおかしくない、総合力の高い捕手。
「八木もスタメンを獲ったか!」
「海堂もおるとか、反則だろ!」
八木恭介、”非凡”
3年生。ポジション、ショート。右投左打。
関東リーグベストナインのショート。攻走守、纏まった万能選手。リーグで8本塁打、出塁率6割越え、5盗塁の成績を叩き出して、この明治神宮大会に乗り込んできた。
海堂整、”御守”
3年生。ポジション、セカンド。右投左打。
小柄ながら脅威の守備範囲とバランス感覚を持っており、内野守備は大学ナンバー1。同じ学校の八木とのコンビは鉄壁であり、今大会ナンバー1の守備チームとされるのは、彼がいるからと評されるほど。
桐島や米野達と戦って来たチームが多い今大会。
優勝予想が難しい中、組み合わせが決まる。
「第一試合!九州国際大学 VS 関西学院!!」
いきなり優勝候補の関西学院と対峙する、大鳥と名神。
これがトーナメント方式の面白さと言えるだろう。
”最強3世代”の1人、幸先高次と戦う!
「いや、俺もいるから!俺が注目選手だから!」
4年生の高橋さんも忘れてないよ!!
◇ ◇
「いきなし、幸先の関西学院かよ」
できれば、潰し合って欲しかったが、確率的に難しいところ。必然とも言えるだろう。いつかは戦わなきゃならない時が、初戦であるだけ。
ところで高橋さんの存在を忘れてますね。
「あいつは捕手ナンバー1だぜ。名神、しっかりしろよ」
「まぁ、確かに。捕手の器量じゃ劣ってると思いますが、大鳥と俺のコンビなら彼に負けないと思います」
「お~~」
そこへの自信を出して、相手チームに挑みたい名神。
打者として、野手としてなら初めての対戦である。しかも、自分と同じポジションの怪物なのだ。
「俺がキッチリ抑えれば負けない!幸先がいくら凄いリードをして、打っても、点さえ与えなきゃいい!」
「その通りだ」
「今大会は大物打ちは村井以外はねぇーし。投手戦になりやすい関西学院なら、勝ち目はあるぜ」
当たって砕けろの精神は大事である。
ここで幸先擁する、関西学院の投手陣の紹介。モブなんで苗字だけだ。
エース
柳本、左のオーバースロー。最速は145キロのストレート。さらにスライダーとフォークを投げる。本格派をそのままにした投手。若干、安定感に欠けており、乱調癖がある。
2番手
井川、右のオーバースロー。平均球速は130後半であるが、制球力は抜群の技巧派。スローカーブとスライダーで前後の投球もできる。
3番手
下薗、右のサイドスロー。絵に描いた変則投手といったところ。シンカーを武器にしており、右打者殺しを任されている。ワンポイントリリーフ。
4番手
相内、右のオーバースロー。最高球速は143キロであるが、速球系のフォークピッチャーである。下園と同じく、リリーフを任されている。
5番手
光明寺、左のオーバースロー。スライダー、カーブ、フォーク、シュートを操る軟投派タイプの投手。球速が130前半であるのが、弱点。
まったくタイプの違う計5人の投手を纏めあげて、リーグを制覇した。
こーやってみると、投手はホントに色々といる。
タイプがバラバラの投手を纏めるというのは、同じ捕手を務める名神には想像以上の負担であると容易に想像できる。自分は基本的に大鳥とのコンビ。凄く気楽であり、彼のリズムや考えなども読める。幸先はそれを5人分、丁寧に正確に扱っているだろう。
幸先が評判以上の選手であるのは、間違いない。
それに加えて、打撃も良いと来た。
ちょっと憂鬱だ。
こうも明らかに自分より格上の捕手と出会うのは、初めてだった。
そんな感じはすぐに分かられてしまう。
「大丈夫だよ、和」
「!」
「1回戦でこの大物と当たったんだ。俺が完投、完封してやれる。向こうに投手が5人いるからって、どんぐりの背比べだ」
自信満々の大鳥。春先から進歩は少ないが、リーグを制覇した実績が自信となっているんだろう。
成長幅は名神の方が大きいというのに、今でも頼れるのは大鳥だ。
「こいつに勝って、俺達のコンビの方がすげぇって、見せつけようぜ。バッテリーは数じゃないだろ?」




