第7話 尋ね人
情報を集めだして2日が過ぎた。そろそろ俺の寝床が特定される頃かな?
佐久間達の部屋も借り、今日も情報を漁らせている。
『HQ、こちらA-1、応答を。オーバー』
「こちらHQ、A-1、どうした。オーバー」
一応無線を使うと言うことで簡易的ながらコールサインを決めた。俺がHQ、佐久間がA-1、西嶋がA-2、家島がA-3だ。
『ギルド内にHQを嗅ぎ回る男たちを確認、数は7。どうしますか?オーバー』
「それとなく接触してHQに来るよう仕向けろ。オーバー」
『了解しました。ですが、よろしいので?オーバー』
「ああ、問題ない。オーバー」
『了解、アウト』
さて、どんなやつが来るかな?
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コーヒーを飲み、窓から屋敷を観察していると、ドアが3回ノックされた。椅子に座ったまま、新しく出したボロモーゼル(ボリシェビキのモーゼルでボロモーゼル。けしてボロボロのモーゼルではない)を帽子の下に忍ばせる。
「鍵は開いてるよ。どうぞ」
「失礼します」
ゆっくりと扉を開け、佐久間が入ってくる。その後ろに強面の男とガチムチマッチョな男が続いて入ってきた。
2人の男はこちらを見ると、ダミ声と掠れた声で喋りだした。
「…本当におやっさんの言う通りだな。兄者」
「ああ。ミアちゃんそっくりだ」
ん?ミアちゃん?てことはこいつらは…。
「はっ。すまん。自己紹介が先だな。俺はシュガート。そしてこっちが」
「ゴードンだ」
「シュガートとゴードンね。峰岸 深雪だ。あんたら俺を嗅ぎ回ってたそうだな。何が目的だ?」
恐らくだが危害を加えようとしていた訳ではなさそうだな。
「…エミリアちゃんがレイモンドのクソ野郎に連れていかれたとおやっさんから聞いてな。助けに来たんだ」
「で、その前におやっさんに話を聞いたらミユキって名前の子供が先に助けに行ったって聞いてな」
「つまりは、加勢しに来たと」
「そう言うことだ」
「ふむ。…2、3教えろ」
「なにをだ?」
「なんで貴族に楯突いてまでエミリアを助けようとするのか。なんで見ず知らずの俺に加勢するのか。この2つだ」
「…俺達は昔、エミリアちゃんに救われたんだ」
「いや、俺達だけじゃない。ついてきた奴等も、今エミリアちゃんを助けようとしてる皆が、あの子に救われたんだ」
話を聞くと、どうやらエミリアは方々で人助けをしていたようだ。目線で合図をし、佐久間にセーフティーを掛けさせる。
「それで?なんで俺に加勢するんだ?」
「…あのクソ野郎が気に入らないのもあるが。恐らくエミリアちゃんがなついてたらしいからな。あんたがミアちゃんに似てるってのもあるだろうが」
「あの子の人を見る目は確かだ」
「なるほどねェ」
煙草を1本取り出し、火を着ける。
「ふっ。…そのエミリアを助けたいって連中はどれくらい居るんだ?」
「あ?ああ、正確には数えてないが」
「恐らく4、50人は居るかなって感じだ」
「ふむ。わかった」
椅子から立ち上がり、煙草を灰皿に入れる。
「俺達は4日後、エミリアを助けに行く。救出自体は俺達でやるがいかんせん情報が不足している。地理風習文化なんでもいい。俺達に教えてくれ」
「それは構わないが」
「俺達は動かなくていいのか?」
「やる気は嬉しいがはっきり言うと邪魔だ。だが君たちが教えてくれた情報がエミリアを助けることに繋がる。どうか力を貸してほしい」
「…俺達は、最初は尻込みしてたんだ」
「相手は貴族、それも領主だ」
「だが、おやっさんからあんたの話を聞いて行くことを決めれた」
「こんな俺達でいいなら、使ってくれ…!」
「…協力、感謝する」
肘をしっかり伸ばし、型にはまった敬礼をする。
しかし、2人はポカンとしてたので1度苦笑し、手を伸ばした。
それを見てシュガートが手を伸ばす。
「改めて、これからよろしく」