第18話 軍団設立
朝食を食べ終え出発しようとした矢先、フランツィスカに呼び止められた。なんでもシュタイナーが呼んでいるらしい。
と、言うわけでフランツィスカの案内のもと、シュタイナーの執務室の前に来た。
「フランツィスカ上級騎士、入ります」
「失礼しまーす」
中に入るとシュタイナーは大きめの机の前に座っていた。どうやら直前まで書類仕事をしていたようだ。
「いやー。急に呼びつけてすまんな」
「まあ急ぎの事情でもなかったしな。で、用ってのは?」
「こいつを渡そうと思ってな」
シュタイナーはそう言うと机の引き出しから1枚の手紙を取り出した。それを机の端まで投げ寄越す。
拾い上げてみると、羊皮紙で出来たその手紙には封蝋がされていた。
「こいつは?」
「ギルドへの紹介状だ。調べてみたところミネギシ達はまだ軍団を設立してなかったみたいだからな。軍団設立には色々とめんどくさい手続きや制約があるんだがそいつがあれば制約のほとんどをパス出来る」
「…確かにありがたいが、何故これを?」
「使える駒に目をかけるのは当然だろ?」
ニヤリと笑いながら答えるシュタイナー。こいつめ。
「ま、ありがたくいただくよ。他に用件は?」
「いや、特にはない。行っていいぞ」
「んじゃ、失礼しまーす」
執務室を後にし、部屋の前で待っていた槇原達と合流。ギルドを目指す。
「それで隊長殿。用ってなんやったん?」
「ああ。あの分遣隊の隊長殿がギルドへの紹介状を一筆書いて寄越したんだよ」
「はー。太っ腹やね」
「そうでもない。向こうもこっちを利用したいんだからな」
槇原と雑談しつつ歩くことしばらく。目的の建物に到着した。2階建ての石作りでここもそこそこ大きい。
東が扉を開けたので中に入ってみる。
中にはカウンターや道具屋、酒場まで併設されていた。とりあえずカウンターに向かう。
酒場の方から幾つか視線が向けられるが、特に気にしない。なんか絡んできそうだし。
丁度左から2番目のカウンターが空いたのでそこに向かう。受付は若そうな女性だ。
「次の方」
「はーい」
と、ここで問題発生。
「カウンターが、高ェ…」
「まあ仕方ないやろ。どこもそんなもんやで」
「いやわかってはいるんだけどね?認めたくないって言うか」
「隊長殿。現実は認めなああかんよ」
「はあ。武山」
「はっ!」
とりあえず武山を四つん這いにさせ、踏み台にしてカウンターの前に立つ。受付嬢が俺か武山のどっちかに引いているが気にしない。
「すいませんね」
「い、いえ。大丈夫ですけど。…それで、本日はどんな用件ですか?」
お、人を見た目で判断しない。そして切り替えの早さ。あんたはええ受付嬢になるで。
「軍団の立ち上げをしたいんですが」
「軍団の立ち上げですか?失礼ですが立ち上げに必要な事項は知ってますか?」
そういや聞いてなかったな。
「いいえ。説明して貰えますか?」
「わかりました。軍団設置にはですね――」
話を聞くとまず冒険者は上からSS、S、A、B、C、D、E、F、G、Hの10クラスに別れる。
まず軍団を設置するにははC以上の軍団長1名とD以上の軍団長補佐2名必要だそうだ。
ちなみに俺は今Gランク。(最初はHだがゴブリンの討伐で1つ上がった)
そして人が集まっても設立登録料と定期的な税金をギルドに納めなければならない。
「それから軍団内と軍団同士の問題はギルドは極力関与しません」
「しつもーん」
「はい。なんですか?」
「この軍団長補佐は設立後に変えても?」
「別に構いませんが」
なるほどね。んじゃ、今居る護衛から補佐選んであとで変えるかな。
「ちなみに登録料は?」
「大銀貨1枚です」
あ、そういや俺この国の金もってねェわ。とりま手紙出してみるか。
「それで、どうしますか?」
「設立はします。ただ、その際にこの手紙をギルドに提出しろって言われまして」
手紙をポケットからだし、カウンターの上に置く。
「第2騎士団の紋章…?拝見しても?」
「どうぞ」
「では失礼して」
手紙を拾い上げ、ひっくり返したり、封蝋をよく観察したりする受付嬢。
「…少々お待ちください」
ひとしきり観察し終えたのか、手紙を持ったままそう言い残し、受付嬢は一度裏に消えた。上と相談でもしてるのかね。
武山を一度立たせ、槇原と暇潰しにしりとりをしていると封蝋が割られた手紙と2枚の用紙を持って受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました。こちらが軍団設立関係の書類です」
再び武山を踏み台にし、カウンターに置かれた用紙を見る。1枚は欄が幾つかあり、見た目はアンケート用紙だ。もう1枚は四角く黒い枠でおおわれた欄と幾つか説明が書かれている。
「そう言えば隊長殿は字書けるん?」
「何故か知らんが読み書きは出来る」
カウンター備え付けの羽ペンを手に取り、必要項目を埋めていく。軍団長は俺、軍団長補佐は槇原と武山にしておこう。
「そう言えば登録料はどうしたらいいんです?今手持ち無いんですけど」
「そうですね…。ではこちらから騎士団の方に請求しておきます。その許可はそちらの手紙にありましたので」
「それと今冒険者ランクが足りないんですけど」
「それも大丈夫です。騎士団が責任を持つとの事でしたので。しかし、出来れば早めにランクアップをお願いします」
「わかりましたー」
すらすらと項目を埋める。しかし、とある項目で手が止まった。
「なあ。軍団名どうしたらいいと思う?」
「隊長殿の好きにしたらええんちゃう?」
「悪いが思い付かん。それに俺にネームセンスを期待するな」
「そうやな…。うーん。せやかてなぁ。どないしよう」
「隊長。意見具申よろしいでしょうか?」
2人で悩んでいると足元から武山が意見具申してきた。いい意見だといいが。
「なんだ?」
「軍団の名前ですが。思い付かないのであれば“雑賀衆”はどうでしょう」
「“雑賀衆”?あの戦国時代の傭兵集団か?」
「はい。我々はこの世界にない銃砲火器を使いますし、戦国最強と謳われた傭兵集団と言うことで験担ぎもあります。それと、隊長の所属していた部隊の部隊章に八咫烏が描かれていたのも絡めました」
「ふむ。個人の趣味も?」
「…まあ少しは」
ふむ。雑賀衆ねェ…。
「まあ、いいか。よし、これから俺達は“雑賀衆”を名乗る。で、名乗るからには名に恥じぬ働きをしないとな」
項目に漢字で“雑賀衆”と書き綴る。さて、これで完成だな。
…そう言えばこのもう1枚は何すんだ?
…。
……。
………。
なるほど。軍団の紋章兼団旗のデザインか。
めんどいから独混50連の部隊章をそのまま使おう。
赤の布地に中央には羽を広げた八咫烏。八咫烏の下に剥き身の日本刀をモチーフにした絵を書き、右側には桜吹雪をモチーフに、左側には剣付き鉄砲をモチーフにした絵を描く。最後にそれらを囲むように黒い丸を書く。
「よし。出来た。どうぞ」
「拝見します。………………はい。記入漏れもありません」
ちなみに漢字の部分にはこっちの言葉の文字で振り仮名を振ってある。読めないと困るしな。
「はい。手続きは完了です。お疲れさまでした」
受付嬢はそう言うと紙を纏めた。
「他にご用は?」
「いや、特にない。邪魔したな」
さて、今からどうするかな?




