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アルトロス方伯伝記  作者: 橘 ロネ
第一章 帝都
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思案そして片鱗

  シエロはターコイズ工房を後にして、迎えに来たエーティアと共に馬車に 乗り込んだ。

  オピニテウスをアルトロス地方に呼ぶことに成功したシエロだったが問題は山積みであった。

  (今必要なのは、貿易に使う船。そして、それらを買う為のお金。だけど、それよりも問題なのは人材か。ないものづくしだな…)

  そう、ライージュ商会もといアルトロス地方には絶望的なまでに人材が足りないのであった。

  理由は単純だが、複雑でもある。

  第一にほとんどシエロが家を出ずに家に篭っていたためにシエロは求心力がなく、部下も部下でシエロに対して忠誠心がない。

  第二に商会の主な面子が独立をしてしまったからだ。皆、あまり見ないシエロよりもいつも自分のことを率いてくれる人の方が良いに決まっている。だから、今シエロの下に残っている部下はほとんどいない。残っている者は物好きかただの馬鹿かのどちらかである。

  「ハァァァァ」

  「どうしたのですか?」

  シエロが大きく溜息をつくと、空かさずエーティアが心配してくる。

  各たるエーティアもそんなシエロに付き従っている物好きな人物の一人である。

  「いや、なんでもないちょっと難しいことを考えていただけだよ」

  「そうですか、でもあまり無理をなさらないで下さいね」

  「ああ、分かってるよ」

  (考えれば考えるほど、今の状況は厳しい。一層の事ネゴファールの奴らにアルトロスを譲るか?いや、でも僕からそれを奪おうとしたのだからそれを奪った暁にはライージュ商会も潰すんだろうな)

  今はライージュ商会もネゴファール商会も地位でいったら同等ではあるがもしシエロがアルトロス地方を手放し、ネゴファール商会が手に入れれば2地方を束ねる巨大商会と、ただの中堅商会(中身を見れば弱小商会ではあるが)じゃ話にならずすぐに潰されてしまう。

  (一体何から手をつければいいのだろうか。父上がいたらどうするのだろうか。本当に僕は無力だなぁ、父上に頼ってばっだったからこうなるんだろうな。駄目だ駄目だここでそんなことを考えても意味がない。今は何が出来ないかじゃなく何が出来るかを考える時なんだ)

  シエロは頭を振る。そうするとエーティアが声を掛けてきた。

  「シエロ様、貴方は今きっとオーニス様ならどうしたのだろうとか、最善の方法は何だろうかと考えていらっしゃるのでしょう」

  エーティアが諭すような口調で話す。

  「ですが、それでは意味がありません。オーニスは何故貴方を家の外に出さなかったのですか?何故貴方の我儘を全て受け入れたのですか?」

  「えっ?」

  シエロは予想外の質問に答えを詰まらせる。

  「オーニス様は貴方のことを信じ、愛していたから。というだけではないのは分かるでしょう?」

  「う、うん」

  「やはり分かりませんか」

  エーティアは少し落胆した。シエロなら分かると思っていたからだ。

  (シエロ様は相手の理性は理解できますが、感性は理解できない鈍感ですからね。一体誰に似たのやら。まああの人の息子ならしょうがないですね)

  「お教えしましょう」

  「ごめんなさい、ありがとう」

  「オーニス様は貴方に自分のようになって欲しくなかったんです。世の中の価値を全て理解で判断して、損得で動くような自分に、そして、最善だけを追い求めるような自分に……。だからオーニス様は貴方に本を読ませ我儘を受け入れて、豊かな感性になるように育てたのです。だから貴方はオーニス様の方法や最善の方法を真似る必要はないのです。貴方は貴方自身の方法でそれを解決すればいいのです。それがオーニス様が1番望んだことなのです」

  最後は力の出し切ったような声で言った。

  「ありがとう、エーティア。少しスッキリしたよ。今分かったよ、自分がやるべきことを」

  「はい、頑張ってください、シエロ様。おっと話をしてたら家に到着しましたね」

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