0話 屋上
「屋上ってロマンあるよなー」
と、俺は呟く。
そう、屋上とは学校内最強のロマンロケーションだ。理由は多過ぎて説明できないが、学生にとって屋上は常に故郷であり、新天地なのだ。もういる場所が屋上というだけで、なんらかのイベント発生を期待しても良い。おまけに…
「はあ、そうでしょうか?」
俺の前には金髪碧眼のハーフ美女が存在している。俺の半独り言の台詞に疑問で返してくるとは…簡単に同意せず、疑問で返すということは会話を続けたいという意思の現れ、つまりこちらに気があるという事だ。
さらに、屋上という場所は若者が大好きな「吊り橋効果」という現象が発生する。ドキドキが好き好きにすり替わるという例の理論だ。この現象が発生する点において、屋上は体育館裏をもしのぐ告白スポットとして密かに君臨している。
「ターニャさんはそうは思わないの?」
「え、なんで…」
言葉を続けようとする彼女の唇を人指し指で押さえて制する。
「なんで君と初対面の僕が知ってるかって?それはひ、み、つ」(指をふりふり)
きまったぁぁぁぁぁぁ!!!
これで俺は初対面の怪しい男性かミステリアスな男子へと変貌を遂げた!
ひ、み、つで一語ごとに指を振った点も、可愛さアピールとしてポイントが高い!
「ヒッ…ハッハァ…」
彼女にも今のは相当に効いたようで、息も絶え絶えといったご様子、顔色も土色になってきているし、震えてもいるようだ、これが俗にいう「キュン死」直前というやつか。
『恋愛というのは生かさず殺さずよ』
ここで俺は恋愛百戦錬磨の姉の言葉を思い出す。確かに殺してしまっては元も子もない。
そろそろ勝負を決めるとしよう。
「ターニャさん実は…」
「オエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
俺は目の前が真っ暗になった