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チームの初仕事

 翌日、私達は大学の食堂で食事を取りながら、お互いの意見を持ち寄ることにした。


「レベッカさんの実家の工房にお邪魔して、色々勉強させてもらう許可をレベッカさんから許可は貰いました。ただのバイトだけど、良いの? と確認はされちゃいましたけど……」


 カイト君が意見を出すと、私とライエは目を見合わせて頷いた。

 大学に出かける前に、ライエはお父さんと話をして決意を決めてきたようだ。


「あのね。カイト君。私達、大きな間違いをしていたことに気がついたの」

「間違いですか? なんでしょうかライエさん」

「一人前の錬金術師になって、工房を運営したいっていうのが、私の目的だったのに、いつの間にか工房を立ち上げたいが目的になってた」

「あはは……実は僕もレベッカさんとゲイル局長に同じ事を言われました」


 カイト君が頬をかきながら、苦笑いを浮かべているのを見て、私とライエも一緒に短い息を吐きながら笑った。


「あはは……やっぱり、お父さんもれーちゃんも狸さんも、私達の先生は錬金術師最高位の国家錬金術師なんだよね」

「そうだねぇ。師匠達に近づけるように。って、気合いを入れて大学入ったは良いけど、逆に差が広がった気がしたよ」


 台詞に反して、私達三人の顔は明るい。

 追いかける相手のことが分かって、よりワクワクが増している。

 そんな人達に、私達は錬金術を教えて貰ってきたんだ。


「僕はこの国をより良い国にするために、錬金術師を目指します。そのためには、民のことも、錬金術の有用性も学ぶ必要があると諭されました。だから、僕は民の依頼を錬金術で解決する何でも屋なんかどうかなって思ったんですけど、どうでしょうか?」


 カイト君が握り拳を胸に当てて、考えを口にしてくれた。

 まるで、お父さん達が裏で通じ合っていたみたいに、私達の考えは一致していた。


「私とらーちゃんも同じ考えだよ。よし、それじゃ、今日の授業が終わったら、みんなでギルドに行こっか!」

「あはは。実はこうなると予想して、ゲイル局長から依頼を既に貰っているんですよね。君達にはただのアルバイトではない、君達を錬金術師として見込んで仕事があると言われまして」


 私の提案にカイト君はカバンから大きめの封筒を取り出して、誇らしげな顔で机に置いた。


「カー君、準備良いね!?」

「カイト君、準備はやっ!?」


 何だかんだで、カイト君が一番ノリノリだったことに、私とライエは一緒に驚いた。

 どっちかっていうと控えめな人だと思っていたけど、この二日間で印象が随分変わった気がする。

 思っていた以上に、カイト君は頑張る人だ。ちょっとお父さんに似ているかも知れない。

 そう思ったら、何故かカイト君から目が離せなくなった。


「どうかしましたか?」

「あっ、ううん、何でも無いよ。どんな依頼が入ってるの?」

「ゲイル局長からはまずは簡単な物をやってみて下さいと、言われましたけど、中身はまだ僕も見ていないんですよね。では開けます」


 カイト君は封筒の封を切ると、中から三枚の紙が現れた。

 一つ目は郊外の農家さんからで、農作物に病気が広がって病気を何とかして欲しいという依頼だ。

 二つ目は地下水路に居ついた巨大スライムを退治して欲しいという、退治系の依頼だった。

 三つ目は実業家のお嬢さんが家の大事な花瓶を割ったから、元に戻して欲しいという依頼だった。

 簡単なように見えて、ちょっと大変そうな依頼も混ざっている。

 私は錬金術には強いけど、野菜の病気にはちょっと疎い。

 それに訓練で戦いの練習はしたことあるけど、本物の魔物相手に戦ったこともない。

 花瓶の修復なら、見たままを再現出来るから、何とか出来そうかな。


「花瓶ならすぐ出来るかも。原型が分かれば設計図を書けば良いわけだし」


 私は花瓶の依頼をつまんで、依頼者の情報を頭の中に写した。


「あ、この病気、キャベツの葉が黄色くなったり、黒く変色か。確か寄生性の細菌のせいだから……。もしかしたら、何とか出来るかも」


 そして、ライエが農家の悩みを記した紙を手にとって、何かを考え始めた。


「僕は逆に錬金術の腕に自信が無いので、スライム退治が出来そうです。剣の訓練は小さい頃から受けているので」


 カイト君がスライム退治の紙を取ると、私達はお互いに顔を見合わせて少し驚いた。

 見事なまでに内容がばらけている。


「あ、封筒の中に、もう一枚紙が入っています。えっと、ゲイル局長が言うには、三人で協力して、一つ一つ仕事を片付けて下さい。お互いに、得意なことを教え合って、お互いに学ぶことが一人前の錬金術師への近道です。と書いてあります」


 しかも都合が良いことに、依頼された場所は三箇所とも近い位置に集まっている。

 本当に私達の周りの大人達は心配性で、世話好きな人達ばかりだ。

 その想いを、私なりにしっかり誰かに繋げられるように頑張ろう。まずは一緒にいてくれる二人にだ。


「よーっし、それじゃ、それぞれの場所に三人で行ってみようか」


 こうして私達は、少し変わったアルバイト兼クラブ活動を開始することになった。


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